歴史学特講(日本古代史)
文学部 - 史学科
HHT55010
コース情報
担当教員: 北條 勝貴
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 金3
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
授業参加
リアクションペーパー
レポート
その他
グループワークの成果も,貢献の程度も含めて評価の対象とする。
詳細情報
概要
近年,歴史学の各分野で,歴史研究・歴史叙述を専門家の独占から解放し,一般社会のひとびととともに考えてゆくパブリック・ヒストリーが盛んになっている。そこでは,史料を読解し過去の事実を云々するだけでなく,わたしたちが直面しているさまざまな現代的問題について,歴史的な知見を援用し解決の方法が模索されている。例えば,災害史の知識は,防災・減災のリスク管理に役立ってくれるのか。伝統や文化財の保全と環境の改変・開発とは,どのように折り合いをつけてゆくべきなのか…。しかし,それらをめぐる合意形成の現場では,負の歴史をめぐる地域住民の悪感情の調整,"Shared Authority" をめぐる葛藤など,さまざまな固有のアポリアが横たわっていて,容易な解決を許さない。本授業では,これまで担当教員が関わってきた幾つかのケースを検討対象に掲げ,日本古代史の研究史における重要な論争とも絡ませながら,社会生活における〈歴史の応用〉について考えてゆく。 具体的には,ガイダンスのあと,2回目でパブリック・ヒストリーという活動の概要を説明し,3〜9回で,環境問題,ジェンダー問題,マイノリティ問題,防災・減災問題を取り上げる(各回のテーマ・内容・時間は,受講生の興味・関心を受け変更することもある)。また,10〜13回ではアウトリーチの問題として,1950年代における国民的歴史学運動を取り上げつつ,当時試みられた歴史の紙芝居化にグループワークとして挑戦し,成果を受講生全員で共有する(すなわち上演会)。 なお各回の進行は,まず個々のテーマに関する60分ほどの講義のあと,提示されたテーマについて各グループで話しあい,考察の成果を共有し講評する形とする。成績評価は,毎回提出してもらうリアクション・ペーパー,グループワーク,学期末のレポートを重視して行う。レポートの内容・形式・評価基準などについては,授業のなかで説明する。
目標
1)パブリック・ヒストリーの基本的な立場を理解できるようにする。 2)現代の社会的諸問題の背景に,いかなる歴史的経緯が存在するか分析できるようにする。 3)歴史学の研究成果を,一般社会へ適切に発信する方法を考案できるようにする。 4)現代の社会的諸問題に対し,歴史学の立場からアプローチする方法を考案できるようにする。
授業外の学習
1)予習(90分程度):次回授業で扱うテーマについて,参考文献を読むなどして調査し,要点をまとめておく。 2)復習(100分程度):講義とグループワークの成果を踏まえ,自分なりの見解をリアクション・ペーパーにまとめ,Moodle に提出する。
所要時間: 190分
スケジュール
- ガイダンス)歴史的知見の応用をめぐって
- 総論)パブリック・ヒストリーと日本古代史
- 事例1)環境問題─神社と祭祀遺跡を考える─a
- 事例2)環境問題─神社と祭祀遺跡を考える─b
- 事例3)ジェンダー問題─孝謙・称徳天皇の性自認を考える─a
- 事例4)ジェンダー問題─孝謙・称徳天皇の性自認を考える─b
- 事例5)マイノリティ問題─渡来人の帰属意識を考える─a
- 事例6)マイノリティ問題─渡来人の帰属意識を考える─b
- 事例7)防災・減災問題─高知徳王子の『源氏物語』地名─a
- 事例8)防災・減災問題─高知徳王子の『源氏物語』地名─b
- グループワーク/アウトリーチ問題)国民的歴史学運動と紙芝居上演a
- グループワーク/アウトリーチ問題)国民的歴史学運動と紙芝居上演b
- グループワーク/アウトリーチ問題)国民的歴史学運動と紙芝居上演c
- 紙芝居上演会/まとめ
教科書
テキストはとくに指定しない。必要な資料は毎回配付する。
参考書
授業の進行に即して適宜指示・紹介する。
『歴史を社会に活かす─楽しむ・学ぶ・伝える・観る─』
著者: 歴史学研究会 編
出版社: 東京大学出版会,2017年
『パブリック・ヒストリー入門─開かれた歴史学への挑戦─』
著者: 菅豊・北條勝貴 編
出版社: 勉誠出版,2019年
『療法としての歴史〈知〉─いまを診る─』
著者: 方法論懇話会 編
出版社: 森話社,2020年