アジア・日本史系概説I(日本史)
文学部 - 史学科
HHT50010
コース情報
担当教員: 北條 勝貴
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 月3
形式: 対面授業
レベル: 200
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
リアクションペーパー
レポート
詳細情報
概要
日本列島の古代史を東アジアとの関係において捉えることは,戦後歴史学のスローガンのひとつといってもよく,日本史研究においてはとりたてて新しい視点ではない。しかしそれは,中国王朝や朝鮮半島,日本古代国家との(主に政治的な)関係史にすぎず,ユーラシアの北方や南方の諸国,国家を形成しなかった諸民族との交流に焦点を当てることで,まったく異なる様相をみせ始める。その繋がりのなかで,なぜ日本列島は稲作を通じた社会変革をなし,最終的に国家の成立へと至ったのだろうか。われわれの生きる〈日本〉の枠組みは,あらゆる可能性のなかで,どのようにいまある形へ実現してきたのだろうか。 本授業では,高校までの歴史教育が削り落としてきたさまざまな要素に光を当て,政治史・社会史・経済史はもちろん,心性史や環境史といった新たなアプローチも加えながら,東部ユーラシアに位置する列島古代史のアウトラインを論じてゆく。歴史に "if" はないとよくいわれるが,顕在化しなかった可能性を想定することは,人文科学としての歴史学において重要な意味を持つ。単なる通史の講義に止まらず,幾つかの思考実験を試みつつ,われわれの目の前にある〈日本史〉のありよう,とくにその起源となる時代・社会・文化のあり方について考えてみたい。 具体的には,まずガイダンスのあと,1〜2回で進歩史観に基づく既存のアジア史/日本史の枠組みを相対化し,3〜12回で,自然環境の変化・アジアの政治・社会変動を軸に,旧石器時代から平安時代中期に至る古代史の諸局面について扱ってゆく。各回の進行は,まず60分ほどの講義のあと,提示されたテーマについて各グループで話しあい,考察の成果を共有し講評する形とする。成績評価は,毎回提出してもらうリアクション・ペーパー,学期末のレポートを重視して行う。レポートの内容・形式・評価基準などについては,授業のなかで説明する。
目標
1)最新の研究成果を踏まえ,日本古代(縄文時代〜平安中期)を通史的に概観できるようにする。 2)新たな発見・研究成果による歴史像の更新を通じ,高校までの教科書で学んできた〈史実〉が,ひとつの仮説に過ぎないことを自覚できるようにする。 3)一国史・人間の歴史という固定的な枠組み(あるいは記憶型の歴史認識)を相対化し,より柔軟で多角的な歴史への眼差し(思考型の歴史認識)を持てるようにする。
授業外の学習
1)予習(90分程度):次回授業で扱う時代について,高校の教科書等で復習し,要点をまとめておく。 2)復習(100分程度):講義とグループワークの成果を踏まえ,自分なりの見解をリアクション・ペーパーにまとめ,Moodle に提出する。
所要時間: 190分
スケジュール
- ガイダンス:現代と〈古代史〉を接続する
- 歴史観の更新:アジア史/日本史の枠組みを相対化する ・歴史は〈事実〉か? 高校教育まで/一般の歴史観はどう作られているか?
- アジア史/日本史のタイムライン1)6世紀以前_1 ・縄文時代:狩猟採集の信仰・環境文化
- アジア史/日本史のタイムライン1)6世紀以前_2 ・弥生時代:年代観の刷新と地域社会像の変貌
- アジア史/日本史のタイムライン1)6世紀以前_3 ・古墳時代:王権の誕生と国際関係/ジェンダー/古墳祭祀
- アジア史/日本史のタイムライン2)7〜8世紀_1 ・飛鳥時代1:国際関係と中央集権への助走
- アジア史/日本史のタイムライン2)7〜8世紀_2 ・飛鳥時代2:律令国家への胎動と内外の紛争・戦乱
- アジア史/日本史のタイムライン2)7〜8世紀_3 ・奈良時代1:律令国家の形成
- アジア史/日本史のタイムライン2)7〜8世紀_4 ・奈良時代2:仏教国家への変質
- アジア史/日本史のタイムライン3)9〜11世紀_1 ・平安時代1:王権の中国化と摂関政治の胎動
- アジア史/日本史のタイムライン3)9〜11世紀_2 ・平安時代2:王朝国家への転換と摂関全盛期
- アジア史/日本史のタイムライン3)9〜11世紀_3 ・平安時代3:地域社会の充実と中世への変貌
- トピック:列島社会と移動/環境/ジェンダー
- まとめ:われわれにとって〈古代〉とは何か
教科書
テキストはとくに指定しない。必要な資料は毎回配付する。
参考書
授業の進行に即して適宜指示・紹介する。
『(東大連続講義)歴史学の思考法』
著者: 東京大学教養学部歴史学部会 編
出版社: 東京大学出版会,2020年
『日本史史料』1/古代
著者: 歴史学研究会 編
出版社: 岩波書店,2005年
『テーマで学ぶ日本古代史』社会・史料編
著者: 佐藤信 監修・新古代史の会 編
出版社: 吉川弘文館,2020年