現代歴史学の課題
文学部 - 史学科
HHT20400
コース情報
担当教員: 山本 成生
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 水2
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 不可
評価方法
出席状況
授業参加
リアクションペーパー
定期試験
定期試験期間中
小テスト等
詳細情報
概要
21世紀に入りインターネットの普及等による高度な情報化社会が到来すると,「歴史学の営み」も大きな変化をこうむるようになった。例えば,歴史家の考察の土台となる「史料」は,文書館へのアクセシビリティや「刊行史料」というかつての制約から解放され,直接的かつ容易に参照し得るものとなった。膨大な過去の記録に接するようになった今日の歴史家は,史料の文言(テクスト)のみならず,字体や図像,支持体の素材・形状,そして作成や伝来の諸状況をも踏まえた多種多様なデータを,TEI (Text Encoding Initiative) にように統一的かつ汎用的に整理する術を身につけることが必要になった。 歴史家にとって,情報革命は「便利なツールの登場」にはとどまらない。それは人文学の既存の考え方や手法を揺さぶり,テジタル・ヒューマニティーズ(人文情報学)/デジタル・ヒストリー(DH)という新たな学問分野――あるいは方法論のためのプラットフォーム――を生じさせた。そして情報革命と呼応して,歴史的事象へのアプローチ自体も変化している。狭義の「思想史」から距離を置き,過去における(女性も含めた)知識人のあり方やかれらの組織・教育制度,知的実践を総合的に扱うインテレクチュアル・ヒストリーは,その代表例といえるであろう。 本授業では,このような「歴史学の尖端」の諸分野における第一人者を講師に迎え,受講者各自の卒業論文に直接的かつ根本的に資する講義が展開される予定である。
目標
(1) デジタル・ヒューマニティーズ,DH,インテレクチュアル・ヒストリーなどに関する基礎的な知識を身につける。 (2) TEI を始めとする歴史学に必要なICT技術(プログラミングを含む)を習得する (3) 上記の視座や技術を,各自の卒論テーマの研究に応用する。
授業外の学習
この授業の講義は,本来は少なくとも半期の期間が必要な内容を凝縮しておこなわれる。よって,履修者は参考書の欄に掲げた授業担当者の著作を始めとした関連資料を熟読し,ノートにまとめるなどの授業時間外の予習・復習が必要となる。また,受講後半ではプログラミングの実習がおこなわれる予定である。それは人文学の研究で必要とされるものなので,過度に専門的ではないが,パソコン・インターネットに関する基礎知識やタイピンピングに不安がある者は,事前に勉強・練習をしておくべきである。 授業1回あたりの学習時間の具体的な内訳※: ・予習(80分以上):高校世界史の教科書,指定参考書,Web情報等で該当回のテーマや関連事項を調べて,ノート等にまとめておく ・復習(110分以上):授業内容をノート等に整理する。さらに疑問点や発展学習を自分で考え,参考資料を検索・読解し,そこで分った点を前記のノートに付け加える ※ 時間内訳と予習・復習の内容は,各回の進行状況と教員の指示により変更される可能性がある
所要時間: 授業1回あたり190分以上
スケジュール
- イントロダクション(山本)
- 歴史資料デジタル化の「いま」1 ーデジタルアーカイブという言葉(後藤 真)
- 基礎的事項の確認(山本)
- 歴史資料デジタル化の「いま」2 デジタルヒューマニティーズ・デジタルヒストリー(後藤 真)
- 歴史資料デジタル化の「いま」3 デジタルヒューマニティーズ・デジタルヒストリー(後藤 真)
- 歴史資料デジタル化の「いま」4 歴史学の手法と現在のWeb社会の関係を考える(後藤 真)(後藤 真)
- 「史料」から読み解くオスマン帝国史:アーカイブズ学の現在1 国家史の誕生 口承文学から年代記作成へ(松尾 有里子)
- 「史料」から読み解くオスマン帝国史:アーカイブズ学の現在2 官僚制の高度化と公文書(松尾 有里子)
- 「史料」から読み解くオスマン帝国史:アーカイブズ学の現在3 イスラーム法廷文書とオスマン近世社会(松尾 有里子)
- 「史料」から読み解くオスマン帝国史:アーカイブズ学の現在4 近代オスマンジャーナリズムの興隆と女性(松尾 有里子)
- ビッグデータ解析に基づく新しい歴史ナラティブの戦略:イングランド裁判史料を事例に(小風 尚樹)
- 歴史上の実データを使った情報の可視化演習1(小風 尚樹)
- 歴史上の実データを使った情報の可視化演習2(小風 尚樹)
- 歴史上の実データを使った情報の可視化演習3(小風 尚樹)
教科書
各講師が各回に指定した文献,ないしは配布したプリント。
参考書
歴史情報学の教科書: 歴史のデータが世界をひらく
著者: 国立歴史民俗博物館(監修)
出版社: 文学通信・2019年
オスマン帝国の諸問題
著者: 鈴木董(編)
出版社: 山川出版社・2012年
欧米圏デジタル・ヒューマニティーズの基礎知識
著者: 一般財団法人人文情報学研究所(監修)
出版社: 文学通信・2021年