現代数学B
共通 - 全学共通
GST20110
コース情報
担当教員: 角皆 宏
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 金3
形式: 対面授業
レベル: 200
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業参加
リアクションペーパー
定期試験
定期試験期間中
その他
「リアクションペーパー」は授業期間内の課題提出で,「出席状況」の評価を含む。「授業参加」を参考にすることもある。以上は主に合否の判断が微妙な場合の参考とし,合格の場合の評価(A~D)については上記の割合に関わらず主に期末試験の成績に基づく。
詳細情報
概要
「0.999…って大体1だよね。」「大体ってなんだよ。ちょうど1だよ。」「え?そうなの?」 実数全体の集合Rは多くの数学的現象の基本的な場であり,ただ数が集まった集合であるだけでなく,四則演算が出来るという代数構造,大きい/小さいという順序構造,近い/遠い・収束・極限という距離・位相構造を備えていることが重要である。本講義の前半では,より基本的な数である自然数から実数を構成する道筋を辿ることで実数の基礎付けを行ない,後半では,公理による実数の特徴付けに基づき,幾何学・解析学が展開する場としての実数の基本性質を講義する。集合・写像・同値関係などの用語を用いるので,「現代数学A」(或いはそれに準じる科目)を学んでいるか,受講と並行して自習することが望ましい。 講義中心で行なう。講義中心の授業にアクティブに取組むための留意点について注意し,授業内で取組みを適宜促す。 初回授業までに履修登録の上,Loyola授業掲示板を確認して,moodleコースに登録すること。 ・Loyola授業掲示板・moodleを通じて解説資料・演習問題を事前に提示することがあるので,目を通した上,必要に応じて予め手元において受講されたい。 ・指示された演習課題について,清書した答案を,授業終了後にmoodleを通じて提出する。提出方法の詳細についてはmoodleで指示する。 ・Loyola授業掲示板・moodleを通じて,まとめや自習課題,より進んだ学修に向けての補足などのプリントを配布することがある。 (授業開始後の状況により,変更することもあり得る。) この科目は全学共通科目CP3に掲げられたコア科目群4カテゴリーのうちの「思考と表現」に属す科目で,現代的な数学に関する学習機会の提供を行なうとともに,数学的対象の定式化の諸手法を通じて,必ずしも共通認識を持たない他者との間で正確なコミュニケーションを行なうための方法・技術に触れることを目的とする。
目標
・実数の構成を通じて,その基礎付けを理解すること ・収束・極限などの概念の定式化を理解すること ・公理に基づく概念の定式化に馴染むこと ・それらの事柄を集合・写像・同値関係などの現代数学の言葉で記述することを通じて,現代数学の言葉遣いに親しむこと などの数学的内容の理解・習熟に加え,全学共通科目としては,明確な定義・定式化の下で議論をすることの必要性や,そのための手法を理解し,活用できるようになる。
授業外の学習
特に予習は必要としないが,関連する書籍などを読んで普段から親しんでおくことで,講義内容に馴染み易くなるだろう(週0~1時間程度)。 新しい概念などの馴染みのない事柄が多く現れるので,復習が重要である。講義には前回までの内容を復習して臨むこと。用語の定義の確認,様々な例を通じて授業時に触れた内容を把握することなど,次の授業までに親しんでおくことが大切であろう(週2〜3時間程度)。 その一環として,講義後に演習課題に取組み提出することを要する。実際に手を動かして書いてみることにより,抽象的な内容を体感することが大切である(毎回1~2時間程度)。
所要時間: 3〜4時間程度
スケジュール
- 初回授業までに履修登録の上,Loyola授業掲示板を確認して,moodleコースに登録しておくこと。(以下は大体の予定。授業の進捗状況により変更することがあり得る。詳しくは担当者のwebpageを参照のこと。) 数体系の概観(自然数N・整数Z・有理数Q・実数R・複素数C) 整数Zを基にした有理数Qの構成(1)同値関係・類別・商集合
- 整数Zを基にした有理数Qの構成(2)有理数の構成
- 整数Zを基にした有理数Qの構成(3)有理数の和・積の定義とそのwell-definedness 自然数Nを基にした整数Zの構成
- 自然数Nの基礎付け(1)空集合からの構成・Peanoの公理系
- 自然数Nの基礎付け(2)数学的帰納法による自然数の和・積の定義
- 有理数Qを基にした実数Rの構成(1)Dedekindの切断
- ε-δ論法による収束の定式化といくつかの例
- 有理数Qを基にした実数Rの構成(2)Cauchy列を用いた完備化
- 有理数Qを基にした実数Rの構成(3)Cauchy列の収束(完備性)
- 前回の続き・ここまでのまとめ・公理による実数の特徴付け(導入)
- 公理による実数の特徴付け・実数の諸性質の同値性(実数の連続性)(1)Dedekindの切断の公理・有界集合の上限・下限の存在・有界単調数列の収束・有界数列の上極限・下極限の存在
- 公理による実数の特徴付け・実数の諸性質の同値性(実数の連続性)(2)有界数列の集積点の存在(Bolzano-Weierstrassの定理)・Archimedes性・区間縮小法の原理・Cauchy列の収束(完備性)
- 函数の収束・極限・連続性(1)函数の収束・連続・中間値の定理
- 函数の収束・極限・連続性(2)一様収束・一様連続・最大値の原理
- 期末試験
教科書
特定のテキストに沿った授業ではなく,一連の内容から適宜選択・編集して講義する。「実数」「位相」などに関する本はたくさん出版されているので,書店・図書館などで自ら手に取って興味を持ったものを積極的に読んでもらいたい。
参考書
下記の他,数学図書室に関連書籍を多く用意しているので,活用されたい。
集合と位相(日評ベーシックシリーズ)
著者: 小森洋平
出版社: 日本評論社, 2016
イプシロン-デルタ(数学ワンポイント双書20)
著者: 田島一郎
出版社: 共立出版, 1978
集合と位相(大学数学の入門8)
著者: 斎藤毅
出版社: 東京大学出版会, 2009