平和構築とメディア
共通 - 全学共通
GSS30240
コース情報
担当教員: 東 大作
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 金3
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業内期末試験
授業期間中
その他
授業内テストを実施する(評価の80%)。出席点が20%。
詳細情報
概要
現代における主な戦争・軍事紛争をテーマに,その原因と解決方法を探っていきます。国際紛争の問題や,メディアに興味がある全ての学生の方々を歓迎します。授業の前半は,今のメディアがどのように戦争や紛争の実態や,その解決法について取材し伝えていくことができるかを探っていきます。具体的には,1)ベトナム戦争とその教訓,2)中東和平交渉(イスラエルとパレスチナの交渉)の挫折と昨年勃発したガザ紛争の解決に向けた模索,3)北朝鮮の核問題,4)イラク戦争とその後の国家再建,について,私が実際に企画・現場取材・制作を行ったテレビドキュメンタリー(NHKスペシャル)を見た上で,取材当時の紛争当事者の苦悩と,当時の和平交渉,そしてその後の展開や挫折を追い,和平を作る上での課題を検証していきます。授業の後半は,自分が研究者や国連アフガニスタン支援ミッションの政務官として関わったアフガニスタンにおける平和構築などをテーマに,紛争後の国家再建,平和構築の問題について考えます。具体的には,自ら行ったアフガンや東ティモールでの現地調査の結果や,国連アフガン支援ミッション和解再統合チームリーダーとして携わった和解プログラムの立ち上げやその難しさについての体験を共有し,将来の方向性を考えたいと思います。最後に,国連の和平調停や,国連平和構築委員会の活動,イスラム国など新たな紛争への対応などについて,2012年8月から2014年夏まで,国連日本政府代表部の公使参事官として携わった「国連平和構築委員会」等,ニューヨーク国連本部に体験も踏まえながら,現在の紛争解決と,持続的な平和作り,そこにおけるメディアの重要性について論じていきます。その上で,2016年以降続けている南スーダンやシリアについての最新調査について共有します。最後に,「ウクライナ戦争をどう終わらせるか」という昨年出版した本をベースに講義を行い,現代の戦争をどう終結させていけることができるのか,考察していきます。 (教員の,経歴や主な本,メディア出演や新聞記事などは,下の「講義概要URL」 リンク参照) (担当教員は国際協力関連の勤務経験を有する。本講義の到達目標に向け,実務に基づいた知見と,多文化な環境や国際的なプロジェクト運営の経験を生かします。)
目標
授業を通じ,現代の戦争や軍事紛争の問題や,それをテレビの報道番組や論文,著作として伝えていくことの難しさや意義について考えを深めていきます。将来,国際関係の研究者や,メディア,様々な企業やNGOなどで勤務する時に必要な,世界的な視点を培ってもらうことが,本授業の目標です。教員がこれまで経てきた,NHKディレクター,国際政治学者(カナダのブリテイッシュコロンビア大学政治学科でMAとPhDを取得した経験),国際公務員(国連アフガニスタン支援ミッション和解再統合チームリーダー),外交官(国連日本政府代表部公使参事官)などでの経験を学生の方々に共有し,日本国内と海外の双方で仕事をする参考にしてもらえればと願っています。
授業外の学習
教科書を授業時間外に読んで,授業の参考にして頂きます。
所要時間: 190分
スケジュール
- イントロダクション(授業の予定や評価方法等の説明)教官が企画制作を担当したNHKスペシャル「我々はなぜ戦争をしたのか~ベトナム戦争・敵との対話~」(放送文化基金賞受賞)を視聴。番組制作に関わる秘話や,番組が日本における議論にどのような影響を与えたのかなどについて解説を行う。
- 教官が企画制作したNHKスペシャル「憎しみの連鎖はどこまで続くか~パレスチナとイスラエル~」(2002年)を視聴。制作に向けた困難と,その後も挫折が続く中東和平交渉の課題について解説する。
- 2023年10月に勃発したガザ紛争の現状について,NHKが教官をインタビューし,NHKおはよう日本で放送した,「ガザ紛争と日本の役割」についての放送も見ながら,イスラエルとパレスチナの和平に向けて,日本にどんな役割が果たせるか考える。
- 教官が企画制作したNHKスペシャル「犯罪被害者はなぜ救われないのか」を視聴。その後,犯罪被害者自らの運動とその声が,社会や政治に届き,犯罪被害者基本法の成立をはじめ,司法制度の根本的改革につながった運動史とその意義を解説する。
- 教官が企画制作したNHKスペシャル「核危機回避への苦闘~韓国,米朝の狭間で」を視聴。番組を制作する上での困難や,韓国閣僚への取材交渉秘話について話した上で,その後の北朝鮮核問題に関する経緯と,6か国協議の挫折について解説する。
- 教官が企画制作したNHKスペシャル「イラク復興 国連の苦闘」(世界国連記者協会銀賞受賞)を視聴。番組制作に向けた取材交渉について共有し,イラクの国家作りがその後,どのように崩壊し,ISISの台頭につながったのか,解説する。
- 教科書「平和構築~アフガンと東テイモールの現場から」(岩波新書)を使いながら,平和構築と正統性の問題。「紛争後の国家再建を通じた安定した平和作り」と定義される平和構築の歴史的な経緯や,課題について基礎的な解説を行う。その上で,教官が行った,アフガニスタンにおける平和構築の調査について共有する。授業においては,調査の内容と,教官が政策提言を行ったNHK番組「視点論点」なども視聴しながら,議論を進める。2009年に教官が発表したアフガン支援策がどう日本の政策に反映され,和解への動きが始まったかも解説する。
- 教科書「内戦と和平~現代戦争をどう終わらせるか」も使いながら,2021年にアフガニスタンの旧政権が崩壊し,その後,米国の経済制裁により人道危機が生じる中で,教官自らがかかわった,日本のアフガン支援策について共有し,アフガンの自立と安定に向けて何ができるか共に考える。
- 「内戦と和平」を」使いながら,東テイモールや,イラク,シエラレオネなどの紛争と,平和構築の現状について解説しつつ,何が平和構築の失敗や成功に繋がるのかについて考える。
- 「内戦と和平」を使いながら,教官が,2016年から繰り返し現地調査を実施している南スーダンの平和構築の破綻と,再度の和平交渉,平和構築の現在の状況などについて,2023年や2024年の現地調査の内容も含め共有し,アフリカの平和構築の課題について考える。教官が出演した「クローズアップ現代」なども紹介しながら,平和構築とメディアの課題についても議論していく。
- 「内戦と和平」も使いながら,イラク,イエメンなどの紛争についても解説し,現代の戦争を終結させる困難と課題について考える。出演したクローズアップ現代なども紹介しながら,メデイアと平和構築の問題にも触れていく。
- 教科書「ウクライナ戦争をどう終わらせるか」(2023年刊)を使いながら,2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻と,その解決策,日本が果たせる役割などについて講義していく。
- 「ウクライナ戦争をどう終わらせるか」を使いながら,ウクライナ戦争のその後の状況と,終結に向けた課題,困難などについて考察する。2023年2月に教官が出演した「日曜討論」なども見ながら,日本が果たせる役割についても考えていく。またウクライナ戦争によって,国連安保理が分裂状態になる中,アフリカや中東での平和構築の動きも大きく阻害されている現状を伝えつつ,日本に何ができるか議論する。
- 授業内試験を行う。
教科書
「ウクライナ戦争をどう終わらせるか」と「内戦と和平」は必読です。
「内戦と和平~現代戦争をどう終わらせるか」
著者: 東 大作
出版社: 中公新書 2020年
「ウクライナ戦争をどう終わらせるか~和平調停の限界と可能性」
著者: 東 大作
出版社: 岩波新書 2023年
「平和構築~アフガン・東ティモールの現場から」
著者: 東 大作
出版社: 岩波新書 2009年
参考書
人間の安全保障と平和構築」日本評論社 2017年
Challenges of Constructing Legitimacy in Peacebuilding: Afghanistan, Iraq, Sierra Leone, and East Timor
著者: Daisaku Higashi
出版社: Routledge 2015
Inclusivity in Mediation and Peacebuilding: UN, Neighboring States, and Global Powers
著者: Daisaku Higashi
出版社: Edward Elgar 2022