ケアと依存――自助グループの世界観
共通 - 全学共通
GSP30151
コース情報
担当教員: 葛西 賢太
単位数: 2
年度: 2024
学期: 秋学期
曜限: 木1
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業参加
リアクションペーパー
レポート
その他
毎回,提出されたノートを評価対象とする。 全回出席が前提。三回以上欠席した者には単位を与えない。
詳細情報
概要
人は生きるうえで必ず悩みや苦しみに直面する。それらに対処する現代的な方法として,遺族会,難病の患者会,家族会,薬物依存症者の自助グループなどが広く存在する。この自助グループの原型は,米国生まれのアルコール依存症者の自助グループ,アルコホーリクス・アノニマス(以下AA)である。 この授業では,AAをはじめとするさまざまな自助グループについての文献を事前に読み,授業で報告し,討議することにより,自助グループのケアのしくみについて知的に理解する。いっぽう,授業の中にグループワークを取り入れ,自助グループのピアケアのしくみについて,体験的にも理解することを目指す。 事前に資料を読んで教室で解説・討議する「反転授業」方式をとる。
目標
1.さまざまな自助グループの成立について知り,その運営と,持続可能にする工夫について説明し,自身の仲間作りに生かすことができるようになる。 2.弱さを共有する仲間(ピア)の存在によって,問題解決に及ばなくても,問題と共存するすべがあることを知り,他に説明できるようになる。 3.自助グループの当事者の経験を自らに置き換えて,人生の困難に対処すること,また,対処する人を支援する方法をまなび,自身および他者のケアの資源とすることができる。 4.グループワークを通して,グループアプローチの持つ力を体験的にまなび,自身及び他者のケアの資源に加えることができるようになる。
授業外の学習
毎回,指定された文献を事前に読み,授業中に紹介できるように整理し,自身の感想を付してA4一枚程度にまとめ,当日全員(教員含む)に共有する。そのまとめをもとに教室でプレゼンテーションと討議をおこなう。 テキスト読み込み:120分 ノート作成:70分
所要時間: 190分
スケジュール
- イントロダクション(受講案内,問題意識と講義のねらい,自助グループとは何か,テキストの紹介,毎回の授業の流れ,反転授業の考え方,授業計画),「もう一つの知」配布
- 「もう一つの知」を読み,諸概念の解説(アルコホーリクス・アノニマス,AA,自助グループ,ケア,甘え,依存,弱さ,当事者性)
- 『対話のことば』を読む
- 『アルコホーリクス・アノニマス』という本から,自助グループについて考える
- 映画『アノニマス・ピープル』から,匿名であることの必要性とデメリットを学ぶ
- 『支援と物語の社会学』序章を読む 自己物語が支援のためにどう働くか
- 『支援と物語の社会学』非行からの離脱の物語を読む 自己物語は更生を支えてくれるか
- 『支援と物語の社会学』精神疾患の物語を読む 診断の移り変わりと患者のアイデンティティ
- 『支援と物語の社会学』小児科医の物語を読む 医師が納得できる「尽くす」医療とは
- 『支援と物語の社会学』高次脳機能障害の物語を読む 家族の困難と相談員のあり方
- 『支援と物語の社会学』自死遺族の物語を読む 語ることも聴くことも難しい自己物語をどう開くか
- 『セルフヘルプ・グループとサポート・グループ実施ガイド』第1部を読む
- 『セルフヘルプ・グループとサポート・グループ実施ガイド』第2部を読む
- 『セルフヘルプ・グループとサポート・グループ実施ガイド』第3部を読む
教科書
以下,二つのテキストを購入すること。また,受講前に,「持続可能な善意」pdfをLoyolaよりダウンロードして読んでおくこと。
支援と物語の社会学
著者: 水津嘉克他編
出版社: 生活書院・2020年
セルフヘルプ・グループとサポート・グループ実施ガイド--始め方・続け方・終わり方(改訂増補版)
著者: 高松里
出版社: 金剛出版・2021年
参考書
参考書の『アルコホーリクス・アノニマス』は簡易版があるが,購入するなら「個人の物語」の含まれたハードカバーA5判(アマゾンで3666円)を奨める。ポケット版,文庫版,B5大型判には「個人の物語」が含まれていないので推奨しない。
アルコホーリクス・アノニマス
著者: AA日本出版局
出版社: AA日本ゼネラルサービスオフィス・2002年
対話のことば
著者: 井庭崇・長井雅史
出版社: 丸善出版・2018年
アルコホーリクス・アノニマスの歴史--酒をてばなした人びとをむすぶ
著者: アーネスト・カーツ
出版社: 明石書店・2020年