歴史学 I(日本史)

共通 - 全学共通

GSP30020

コース情報

担当教員: 北條 勝貴

単位数: 2

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 金3

形式: オンデマンド授業

レベル: 300

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

リアクションペーパー

60%

レポート

40%

詳細情報

概要

近年,歴史学の各分野で,歴史研究・歴史叙述を専門家の独占から解放し,一般社会のひとびととともに考えてゆくパブリック・ヒストリーが盛んになっている。そこでは,史料を読解し過去の事実を云々するだけでなく,わたしたちが直面しているさまざまな現代的問題について,歴史的な知見を援用し解決の方法が模索されている。例えば,災害史の知識は,防災・減災のリスク管理に役立ってくれるのか。伝統や文化財の保全と環境の改変・開発とは,どのように折り合いをつけてゆくべきなのか…。教職課程履修者の多く受講する本授業においては,2022年度に始まった高校社会科の新課程の授業「歴史総合」との親和性の高さ,接続も重要だろう。しかし,それらをめぐる合意形成の現場では,負の歴史をめぐる地域住民の悪感情の調整,"Shared Authority" をめぐる葛藤など,さまざまな固有のアポリアが横たわっていて,容易な解決を許さない。 同授業の担当教員:北條は,2022年度の史学科開講科目「歴史学特講(事例研究)」にて,理不尽に抑圧・忘却されてゆく場所/人びとを〈亡所〉と定義,上記と同質の問題意識からそケース・スタディを行った。本授業もそれを踏襲し,北條の関わってきた〈亡所〉の諸問題を検討しつつ,社会生活における〈歴史の応用〉について考えてゆきたい。 具体的には,まずはガイダンスのあと,2〜3回でフィールドと関わるうえでの倫理的な問題を検討する。そののち,3〜13回で〈亡所〉の諸事例を検討,歴史学の立場から何ができるのかを考えてゆく(各回のテーマ・内容・時間は,受講生の興味・関心を受け変更することもある)。 なお各回は,個々のテーマに関する授業動画(60分程度)と,前回のリアクションのまとめ+フィードバック動画(30分程度)で構成する。受講者は,予習を踏まえてこれを視聴,復習の形でリアクション・ペーパーを提出してもらう。成績は,毎回のリアクション・ペーパーと,学期末に課すレポートを重視して評価する(テーマは6月初め頃に発表予定)。レポートの内容・形式・評価基準などについては,授業のなかであらためて説明する。

目標

1)高校までの教科書で学んだ歴史が,唯一普遍ではなく仮説に過ぎないことを自覚できるようにする。 2)一国史・人間の歴史という固定的な枠組み(あるいは記憶型の歴史認識)を相対化し,より柔軟で多角的な歴史への眼差し(思考型の歴史認識)を持てるようにする。 3)過去を学ぶことが現在を生きるうえでどのような意味を持つのか,主体的に考えられるようにする。

授業外の学習

1)予習(90分程度):毎週新聞等で報道された時事問題をひとつ選び,歴史的知見を応用して読み解くトレーニングを行い,Moodle に提出する。 2)復習(100分程度):毎回設定される問いついて,講義の内容と前回のフィードバックを踏まえ,自分なりの見解をリアクション・ペーパーにまとめ,Moodle に提出する。

所要時間: 190分

スケジュール

  1. ガイダンス :環境文化史+環境倫理+パブリック・ヒストリー=亡所考
  2. 方法と倫理1 :宛先のある研究 ・フィールドと関わることで,どのような倫理的関係が発生するのか
  3. 方法と倫理2 :"Shared Authority"をめぐって ・文化財の価値を決める権限は誰にあるのか
  4. 事例1 :毛皮獣養殖をめぐる地域の認識a ・帝国日本で活性化した毛皮獣養殖産業には,どのような特徴があるのか
  5. 事例2 :毛皮獣養殖をめぐる地域の認識b ・環境倫理的にはマイナスの記憶に,地域はどう向きあえるのか
  6. 事例3 :グラウンド・ゼロ=築地にてa ・中央卸売市場築地市場の解体にはどのような意味があったのか
  7. 事例4 :グラウンド・ゼロ=築地にてb ・現在も苦痛を抱く市場関係者にとって,築地はいかにあるべきなのか
  8. 事例5 :明治神宮外苑をめぐるジェントリフィケーション/環境倫理/天皇制a ・明治神宮外苑の再開発にはどのような問題があるのか
  9. 事例6 :明治神宮外苑をめぐるジェントリフィケーション/環境倫理/天皇制b ・外苑という空間の公共性,政治性・歴史性について
  10. 事例7 :前近代の性的多様性と歴史学の臨界a ・前近代の性的多様性について,史料に則して明らかにするにはどうしたらよいか
  11. 事例8 :前近代の性的多様性と歴史学の臨界b ・前近代研究は,現在のトランス差別問題の解消に貢献できるか
  12. 事例9 :上智大学の大学紛争とアーカイヴズの役割a ・大学紛争史の進展から,上智の「歴史記述」を検討する
  13. 事例10 :上智大学の大学紛争とアーカイヴズの役割b ・新たな大学史のあり方とは,いかにあるべきか
  14. まとめ :日本史教育とパブリック・ヒストリー ・パブリック・ヒストリーの試みは,日本史教育に貢献できるか

教科書

テキストはとくに指定しない。必要な資料は毎回配付する。

    参考書

    授業の進行に即して適宜指示・紹介する。

    • 『パブリック・ヒストリー入門─開かれた歴史学への挑戦─』

      著者: 菅豊・北條勝貴 編

      出版社: 勉誠出版,2019年

    • 『歴史を社会に活かす─楽しむ・学ぶ・伝える・観る─』

      著者: 歴史学研究会 編

      出版社: 東京大学出版会,2017年

    • 『「歴史総合」をつむぐ─新しい歴史実践へのいざない─』

      著者: 歴史学研究会 編

      出版社: 東京大学出版会,2022年

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