国際高等教育論②(国際化と国際協力)

共通 - 全学共通

GSP20980

コース情報

担当教員: 梅宮 直樹

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 火4

形式: 対面授業

レベル: 200

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

10%

授業参加

20%

リアクションペーパー

30%

レポート

40%

詳細情報

概要

世界の高等教育の現状と課題を概観したうえで,日本および世界各地で急速に進む高等教育の国際化に焦点をあてながら大学を取り巻く環境の変化と国際社会による対応,また,そのなかで大学が果たすべき役割について議論する。また,海外の2つの大学の学生とオンラインでつなぎ,3か国の学生で集まって互いの国の文化,高等教育制度や大学生活について意見交換を行う交流授業も実施する(マレーシア,カンボジア・ケニア・エジプトのいずれかの大学)。なお,担当教員はこれまでJICAや世界銀行で25年ほど高等教育の国際協力に携わってきており,その経験・知見を踏まえた講義を行う。 授業時限は火曜日4時限であるが,交流授業を行う2回(日程は調整中)については,相手側大学の都合によっては17:30まで延長して実施する可能性があるが,延長部分は,他の授業と重なって参加出来なくても成績に不利にはならない。 なお,2024年度前期に開講する国際高等教育論①は,日本および世界の高等教育の歴史と現状について地域ごとに詳しく見るのに対して,本講義は,現在世界各地で急速に進む高等教育の国際化に焦点をあてながら大学を取り巻く環境の変化と国際社会による対応を詳しく見ることを通じ,大学が果たすべき役割について議論する。また,国際高等教育論②の履修は国際高等教育論①を履修しなくても可能である。ただし国際高等教育論①を履修しておくのが望ましい。

目標

国際化が急速に進む日本と世界の高等教育の現状と課題,それに対する国際社会の対応について理解を深め,大学を取り巻く環境の変化の中で,SDGsの達成やグルーバルな諸課題の解決のために大学が果たすべき役割は何か,大学で学ぶとはどういうことかを考えられるようになる。

授業外の学習

【予習】(所要時間:各回60分程度) ・講義資料を見て予習を行う。 【復習】(所要時間:各回130分程度) ・講義資料を用いて内容を復習する ・リアクションペーパーを作成し,ムードルに提出する ・さらに知見・理解を深めるために,講義において紹介される参考文献を確認する

所要時間: 190分程度(予習,復習およびリアクションペーパーの作成)

スケジュール

  1. ※以下は予定であり,授業の進捗状況により各テーマを扱う授業の回数や授業の順番は変更することがありうる。 【導入:本授業の目的と概要】 本授業の目的と概要について説明したのち,導入として以下のような高等教育にかかる基本的な概念(その定義や高等教育機関の種類など)について確認をする。
  2. 【世界の高等教育の現状と課題①】 ・高等教育セクターは世界全体で量的に拡大している一方で,サブサハラ・アフリカ地域では依然として就学率が10%未満であるなど,地域間では格差が存在する。こういった格差の問題や教育の質,低迷する研究活動など,アフリカを中心とした開発途上地域の高等教育セクターが直面している課題と現状について2回にわたり概観する。 ・また,今日の欧州地域で進む高等教育の汎ヨーロッパ的連携の動き(ボローニャ・プロセス)をはじめトランス・ナショナルな大学概念を模索している状況や国際的動向を概観する。
  3. 【世界の高等教育の現状と課題②】 同上。
  4. 【高等教育の国際化①】 ・高等教育の国際化が世界各地でどのような形でどのように進んでいるのか。高等教育の国際化の定義,国際化の多様な形態(①学生・研究者の国際的な移動,②国境を超える教育プログラム・大学,③複数の国・多数の大学間での国際的な連携)について事例を交え概観。 ・国境を超える教育プログラムや大学は,International Program & Provider Mobility (IPPM)と呼ばれる。単独で提供されるIPPMと共同で提供されるIPPMの類型化を通じ,IPPMの形態と特徴について議論。 ・高等教育の国際化の背景,国際化を推進する要因,国際化がもたらす影響や課題は何か。また,その課題に各国や国際社会はどのように対応しようとしているのかについて議論。
  5. 【高等教育の国際化②】 同上。
  6. 【高等教育の国際化③】 同上。
  7. 【大学間ネットワークと高等教育開発①】 ・高等教育の国際化が進む中において国境を越えた大学間のネットワークの構築と連携が活発になっている。 ・東南アジア地域と日本の工学系の40のトップ大学が2001年に形成したアセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)を事例に,大学間ネットワークを基礎とした高等教育開発の効果,課題と展望について概観する。 ・また,アフリカで2010年に立ち上げられた大学間ネットワークによる国際合同大学院である汎アフリカ大学構想について取り上げ,先行するSEED-Netとの比較を行いながらその現状と課題を検証する。
  8. 【大学間ネットワークと高等教育開発②】 同上。
  9. 【グローバル・ガバナンスと高等教育】 ・今日,国境を越えたグルーバルな課題に対応するために,国家間の連携に加えて,国際社会が課題解決のための「グローバル・ガバナンス」を形成している。黒田(2016)は教育分野におけるグローバル・ガバナンスを①国際法・条約・憲章による模範の提示,②国際機関等の研究等による新しい概念の創造と提示,③国際会議等を通じた目標の合意形成と国際協力のフレームワークの構築,④国際的指標・基準の設定とモニタリング,の4つのアプローチに類型化・整理している。 ・この整理を基に,UNESCOの学位認定に関する地域条約,OECD等による国境を超える高等教育の質保証に関するガイドライン,アジア大洋州大学交流機構(UMAP)による単位互換制度などの具体的事例を確認しながら,高等教育分野のグローバル・ガバナンスについて,その手法に関する特徴や課題を議論する。
  10. 【SDGsと開発途上国の社会経済開発のための国際協力】 ・開発途上国の社会経済開発を進めるために国際社会によって「持続可能な開発目標(SDGs)」が定められ,日本を含む先進国,国際機関,NGO等により様々な分野で国際協力が進められている。 ・開発途上国の現状と課題,それに対して国際社会が定めた持続可能な開発目標(SGDs)について確認したうえで,日本政府による政府開発援助(ODA)を中心に,国際協力の歴史,政策,制度,各分野での取り組み,事業マネジメント手法,等について概観する。なお,本授業では,高等教育分野の国際協力だけでなく,保健,インフラ分野等の様々な分野での協力事例を取り上げながら,国際協力の目的や意義,今後の展望を議論する。
  11. 【日本と世界銀行による高等教育分野の国際協力】 ・日本はODA事業を通じて高等教育分野においても途上国を積極的に支援している。本講義では日本による高等教育分野の現状と課題,今後の展望を概観・議論する。 ・また,高等教育分野における最大のドナーであり,途上国の高等教育政策に多大な影響力を持つ世界銀行の協力について,その内容の変遷と携行を同銀行の政策文書との関連を踏まえ分析した結果について議論する。 ・そのうえで,日本及び世界銀行の高等教育協力の特徴,目的や課題について比較検証を行う。
  12. 【海外大学との交流授業①】(予定) 海外の2つの国の大学の学生と3か国の学生での交流授業を行う。マレーシア,カンボジア,ケニア,エジプトのいずれかの2つの大学。2回にわたり,これら大学の学生および留学生と,互いの国および高等教育に関し相互にプレゼンテーションと意見交換を行い理解を深める。
  13. 【海外大学との交流授業②】(予定) 同上。
  14. 【総括】 ・高等教育の拡充はSDGsにおいて「すべての人に質の高い教育を」と謳うゴール4の達成に不可欠であるのと同時に,人材育成や研究活動を通じ様々な分野での開発目標を達成するためにも役割を果たすことが期待されている。 ・これまでの授業を復習したうえで,14回に亘る授業全体の総括として,国際化やコロナ禍によって大学を取り巻く環境が変化する中で,SDGsの達成やグルーバルな諸課題の解決のために大学が果たすべき役割は何か,また,高等教育機関に身を置く学生個々人としてこれからの大学生活やその後をどのように描くか等について議論を行う。

教科書

教科書は指定せず必要に応じて資料を配付する。

    参考書

    • 『アジアの高等教育ガバナンス』

      著者: 黒田一雄編著

      出版社: 勁草書房・2011

    • 『激動するアジアの大学改革』

      著者: 北村友人・杉村美紀共編

      出版社: 上智大学出版・2012

    • 『高等教育市場の国際化』

      著者: 塚原修一編著

      出版社: 玉川大学出版部・2008

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