国際高等教育論①(歴史と変遷)

共通 - 全学共通

GSP20960

コース情報

担当教員: 梅宮 直樹

単位数: 2

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 火4

形式: 対面授業

レベル: 200

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

10%

授業参加

20%

リアクションペーパー

30%

レポート

40%

詳細情報

概要

日本および世界の高等教育の歴史と現状について地域ごとに概観したうえで,今日の世界の高等教育の現状と課題,その中で大学が果たすべき役割について議論する。また,マレーシアとカンボジアの2つの大学の学生とオンラインでつなぎ,3か国の学生で集まって互いの国の文化,高等教育制度や大学生活について意見交換を行う交流授業も実施する。なお,担当教員はこれまでJICAや世界銀行で25年ほど高等教育の国際協力に携わってきており,その経験・知見を踏まえた講義を行う(参考:https://www.jica.go.jp/recruit/shokuin/careers/careers02.html)。 なお,2024年度後期に開講する国際高等教育論②は,日本および世界各地で急速に進む高等教育の国際化に焦点をあてながら大学を取り巻く環境の変化と国際社会による対応を詳しく見るのに対して,本講義では,日本および世界の高等教育の歴史と現状について地域ごとに詳しく見ることを通じ,大学が果たすべき役割について議論する。また,国際高等教育論②の履修は国際高等教育論①を履修しなくても可能である。ただし国際高等教育論①を履修しておくのが望ましい。

目標

日本と世界の高等教育の歴史,現状と課題について理解を深め,大学を取り巻く環境の変化の中で,SDGsの達成やグルーバルな諸課題の解決のために大学が果たすべき役割は何か,大学で学ぶとはどういうことかを考えられるようになる。

授業外の学習

【予習】(所要時間:各回60分程度) ・講義資料を見て予習を行う。 【復習】(所要時間:各回130分程度) ・講義資料を用いて内容を復習する ・リアクションペーパーを作成し,ムードルに提出する ・さらに知見・理解を深めるために,講義において紹介される参考文献を確認する

所要時間: 190分程度(予習,復習およびリアクションペーパーの作成)

スケジュール

  1. ※以下は予定であり,授業の進捗状況により各テーマを扱う授業の回数や授業の順番は変更することがありうる。 【導入:本授業の目的と概要】 本授業の目的と概要について説明したのち,導入として以下のような高等教育にかかる基本的な概念(その定義や高等教育機関の種類など)について確認をする。
  2. 【世界の高等教育の歴史と概要】 ・中世のヨーロッパで生まれた大学が19世紀以降国民国家の支援を受けながら総合的な高等教育機関として発展し,その後現在の大学の世界標準となるアメリカの大学システムが構築されるまでの大学の発展について世界史的な把握を行う。 ・また,Times Higher EducationやQS,上海大学世界水準大学センターなどが毎年発行している世界大学ランキングが各国の高等教育政策や大学の教育・研究の在り方,大学の国際化の在り方にも大きな影響を及ぼしている。大学ランキングがもたらしたインパクトと正確なデータの見方などを議論する。
  3. 【欧州地域と北米地域の高等教育の歴史と概要】 ・第2回講義で概観した世界の高等教育の歴史的展開の中に位置付けながら,世界各地の高等教育のうち,イギリス,フランス,アメリカなどの欧州地域及び北米の各国の高等教育制度について,その特徴と課題を概観する。
  4. 【日本の高等教育の歴史と概要①】 ・3回にわたり,明治から戦前までの欧米諸国を参考にした大学制度の創生・構築,戦後の新しい大学制度の中でのマス化・ユニバーサル化の進展,2000年代以降の大学改革,ならびに現在の日本の高等教育制度とその特徴・課題を概観する。 ・また,日本は高等教育にかかる私的負担が大きいことで知られる。高等教育にかかる費用は私的にも公的にも負担されているが,その割合は,国によっても,大学の種別によっても異なる。収益率の観点から高等教育への投資が個人および社会にどのように還元されるのかを見ながら,高等教育の費用は誰がどのように負担すべきか,それはなぜかについて議論を行うことを通じ,高等教育の目的や意義についても考察。
  5. 【日本の高等教育の歴史と概要②】 同上。
  6. 【日本の高等教育の歴史と概要③】 同上。
  7. 【アジア地域とアフリカ地域の高等教育の歴史と概要】 ・これまでに概観した世界の高等教育の発展の歴史や国際化が進む今日的文脈の中に位置付けながら,アジア地域およびアフリカ地域の高等教育の歴史と現状について,その特徴と課題を概観する。 ・授業後半で交流授業を予定している国と大学の高等教育の歴史と現状について,その特徴と課題を概観する。
  8. 【海外大学との交流授業①】(予定) 海外の2つの国の大学の学生と3か国の学生での交流授業を行う。1つは,2011年に日本マレーシア両政府の協力の下でマレーシア工科大学の傘下に開設されたMJIIT。もう1つはカンボジアの工科系トップ大学であるカンボジア工科大学。2回にわたり,これら大学の学生および留学生と,互いの国および高等教育に関し相互にプレゼンテーションと意見交換を行い理解を深める。
  9. 【海外大学との交流授業②】(予定) 同上。
  10. 【世界の高等教育の現状と課題①】 ・高等教育セクターは世界全体で量的に拡大している一方で,サブサハラ・アフリカ地域では依然として就学率が10%未満であるなど,地域間では格差が存在する。こういった格差の問題や教育の質,低迷する研究活動など,アフリカを中心とした開発途上地域の高等教育セクターが直面している課題と現状について2回にわたり概観する。 ・また,今日の欧州地域で進む高等教育の汎ヨーロッパ的連携の動き(ボローニャ・プロセス)をはじめトランス・ナショナルな大学概念を模索している状況や国際的動向を概観する。
  11. 【世界の高等教育の現状と課題②】 同上。
  12. 【理論とデータを使った高等教育の今日的課題の検証】 2回にわたり,高等教育開発の理論的枠組みを使った分析やデータを用いた検証作業を通じて高等教育の今日的課題をより深く理解する。 ① マーチン・トロウの高等教育にかかる発展段階論 1973年に米国の社会学者マーチン・トロウによって提示された高等教育発展に関するこの理論はその後の各国の高等教育研究や政策に大きな影響を及ぼした。トロウは高等教育の発展段階をその量的拡充の度合いに応じてエリート教育段階,マス教育段階,ユニバーサル教育段階に分け各国の高等教育を分析。授業では,このトロウ・モデルを理論的枠組みとして用いながら各ステージにおける高等教育の特徴や課題を議論する。 ② 高等教育における男女間格差 教育における男女間格差を検証する際に用いられるジェンダー格差指数(GPI: Gender Parity Index)。男子学生の就学率に対する女子学生の就学率の比率で表され1以下の場合,女子学生の就学率が低く,1を超えると女子学生の就学率が高いことを示す。高等教育については大半のOECD諸国でGPIが1を超え,中進国でも1を超える国が増えている。しかしながら,この数字をもって高等教育では男女間格差はないと言えるのだろうか。データをブレークダウンしてより詳しく見ることで男女間格差の実態を検証し,課題への理解を深める。
  13. 【SDGsと開発途上国の社会経済開発のための国際協力】 ・開発途上国の社会経済開発を進めるために国際社会によって「持続可能な開発目標(SDGs)」が定められ,日本を含む先進国,国際機関,NGO等により様々な分野で国際協力が進められている。 ・開発途上国の現状と課題,それに対して国際社会が定めた持続可能な開発目標(SGDs)について確認したうえで,日本政府による政府開発援助(ODA)を中心に,国際協力の歴史,政策,制度,各分野での取り組み,事業マネジメント手法,等について概観する。
  14. 【総括】 ・高等教育の拡充はSDGsにおいて「すべての人に質の高い教育を」と謳うゴール4の達成に不可欠であるのと同時に,人材育成や研究活動を通じ様々な分野での開発目標を達成するためにも役割を果たすことが期待されている。 ・これまでの授業を復習したうえで,14回に亘る授業全体の総括として,国際化やコロナ禍によって大学を取り巻く環境が変化する中で,SDGsの達成やグルーバルな諸課題の解決のために大学が果たすべき役割は何か,また,高等教育機関に身を置く学生個々人としてこれからの大学生活やその後をどのように描くか等について議論を行う。

教科書

教科書は指定せず必要に応じて資料を配付する。

    参考書

    • 『アジアの高等教育ガバナンス』

      著者: 黒田一雄編著

      出版社: 勁草書房・2011

    • 『激動するアジアの大学改革』

      著者: 北村友人・杉村美紀共編

      出版社: 上智大学出版・2012

    • 『高等教育市場の国際化』

      著者: 塚原修一編著

      出版社: 玉川大学出版部・2008

    © 2025 上智非公式シラバス. All rights reserved.