心理学入門

共通 - 全学共通

GSP20642

コース情報

担当教員: 石井 辰典

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 金2

形式: オンデマンド授業

レベル: 200

アクティブラーニング: なし

他学部履修:

評価方法

レポート

50%

小テスト等

25%

その他

■ショート・レポート(25%):講義内容の整理・発展的内容についての考察などについての400文字程度のレポート。授業期間中に数回行う予定です。 ■研究参加:心理学研究への参加は,心理学を学ぶ上での貴重な体験となります。そこで,研究へボランティアとして参加してくれた学生には追加点を与えます。

25%

詳細情報

概要

ヒトとは何者だろうか?ヒトの「心」とは何だろうか?こうした問いに答えるための学問の1つに心理学が数えられる。現代心理学は,自然科学natural scienceの枠組みと方法論によって「心」とヒトの本質に明らかにしようとする。そこから得られる知見は,必ずしも私たちの日常経験や人文学(哲学や文学,歴史学など)のアプローチから得られる知見と一致するとは限らない。しかし科学的な心理学の知見こそ,ルネサンスを経た私たちの世の中では重要な意味を持ち続けてきたし,役立てられてきた。そしてそれは今後も同様であるはずだろう。 本講義ではそうした心理学がどのような学問であるかを初学者向けに解説してゆく。まず「心」が多面的・多義的な概念であることを確認し,次にそうした「心」がこれまでどのようなものと捉えられてきたのかについて,心理学史(あるいは心の科学史)を紐解きながら解説する。ここでは時代や社会の変化とともに,「心」に対する視点・アプローチが移り変わっていく様を描きたい。特に,現代心理学を構成する主要な5つの視点・アプローチ(脳と心,精神分析,行動主義心理学,認知心理学,進化心理学)には,詳しい説明を加えてゆく。こうした作業を通じて,心理学という学問の全体像やその目的,さらには心理学が本質的・根源的に矛盾を抱えた“未完成”の学問だということについても理解を深めてもらう。 さて,私たちは日々の生活で様々な人間現象・問題に直面する(e.g., 好きな異性が出来る)。本講義の役割は,そうした問題の解決にすぐに役立つ知識・テクニックを伝えることではない(e.g., 異性を振り向かせる方法)。むしろ,そうした問題の成り立ちを深く考えるための知識や枠組みを提供することにある(e.g., 恋愛感情とは何か?ヒトと他の動物の愛情は同じか?)。受講を希望する学生はこの点を是非心に留めておいてほしい。

目標

■学問としての心理学がどのような学問であるかを理解する。 ■心を捉える5つのアプローチについて理解する。 ■日常生活で直面する人間現象の成り立ちを心理学的に分析することができるようになる。

授業外の学習

■講義内容についての理解を確認するため,Web上で回答する小テストを実施します(30分)。 ■授業期間中に数回,ショート・レポート(400文字程度)を提出してもらいます。これは,講師の出した質問や議論について,学生の皆さんの意見や考えを尋ねるものです。興味深い意見は講義で取り上げます(60分)。 ■また,講義内容を補完するような文献も随時紹介します(テキスト・参考書欄を参照)。これらの文献も各自で読み,理解を深めておくことをおすすめします。

所要時間: 90分

スケジュール

  1. オリエンテーション 講義の内容・進め方や,成績評価の基準について説明します。説明の後は,講義の手始めとして,現代心理学がどのような特徴を持つ学問であるかについて解説します。受講予定者は必ず出席して下さい。
  2. 「心」とはどんなものか? 心理学が研究対象とする「心」とは,いったいどのようなものなのでしょうか。これは心理学を理解する上で最も重要な点であり,最も難しい点でもあります。そこで「心」を捉えるアプローチが複数あることを紹介し,以降の授業を体系づけます。
  3. 心理学とは何か?(1) 今回から,心理学とはどのような学問的・思想的背景から生まれた学問なのかを解説します。まず,心理学の理解にとって欠かせない「科学」とは何かについて説明します。
  4. 心理学とは何か?(2) 前回に引き続き心理学がどのような学問かを解説します。今回は,自然科学の誕生後,「心のついての科学」として心理学が生まれた経緯や過程について説明します。
  5. 心を捉える5つのアプローチ:脳と心(1) 心の捉え方は様々ありますが,ここでは代表的な5つのア プローチについて順番に説明してゆきます。初回は脳と心のアプローチ。心と身体の関係について解説します。
  6. 心を捉える5つのアプローチ:脳と心(2) 神経系の働きと心(性格・社会行動・心の病)の関連について解説します。
  7. 心を捉える5つのアプローチ:精神分析(1) 2つ目のアプローチ。生物としての本能と無意識,そして文明人としての抑制機能の2つがダイナミックに心を構成するという考え方を解説します。
  8. 心を捉える5つのアプローチ:精神分析(2) フロイトの唱えた抑圧の機能や心理-性的発達段階について解説し,最後に科学者・哲学者から寄せられた精神分析批判について説明します。
  9. 心を捉える5つのアプローチ:行動主義心理学(1) 3つ目のアプローチ。後天的な学習によって私たちの心が形作られていくという考え方を解説します。まず古典的条件づけを紹介し,それによってどんな人間行動が説明できるかを解説します。
  10. 心を捉える5つのアプローチ:行動主義心理学(2) オペラント条件づけを紹介し,最後に1950年代に行われた行動主義批判について解説します。
  11. 心を捉える5つのアプローチ:認知心理学(1) 4つ目のアプローチ。「心」という捉えがたいものをコンピューター・メタファー によって捉えるという,現代心理学の中核をなす考え方を解説します。そして,認知心理学の観点から次々に明らかになった人間の心の特徴についてお話します。
  12. 心を捉える5つのアプローチ:認知心理学(2) 具体的な認知心理学研究を紹介し,私たちが日々経験する様々な現象を説明する認知心理学モデルについて解説します。
  13. 心を捉える5つのアプローチ(5):進化心理学(1) 5つ目のアプローチ。私たちの身体と同様に,「心」も進化してきたという驚くべき考え方を解説します。この視点には,遺伝子が心のあり方や行動傾向も変化するという考 え方も含んでいます。この視点は1つ目の視点(脳と心)と大きく関連していますが,進化や遺伝という時間軸を考えの 中心においている点が特徴的です。まず,進化とは何か,遺伝とは何かを解説します。
  14. 心を捉える5つのアプローチ(5):進化心理学(2) 進化心理学がどのような意味で新しい心理学なのか,どのような知見が蓄積されているのかについて解説します。

教科書

■テキストについては授業内で指示をします。ここでは,心理学一般についての代表的なテキストを挙げておきますので,必要に応じて参照して下さい。 1)鹿取廣人・杉本敏夫・鳥居修晃(編著) 「心理学 第5版」 東京大学出版 2015年 2)長谷川寿一・東條正城・大島 尚・丹野義彦 「はじめて出会う心理学 改定版」 有斐閣 2008年 3)無藤 隆・森 敏昭・遠藤由美・玉瀬耕治 「心理学(New Liberal Arts Selection)」 有斐閣 2004年 4)Spielman, R. M., Jenkins, W. J., & Lovett, M. D. 「Psychology (2e: 2nd edition)」 OpenStax 2020年 URL: https://openstax.org/details/books/psychology-2e?Book%20details

    参考書

    ■講義を構成する上で参考にした文献を挙げておきます。 1)道又 爾 「心理学入門一歩手前:心の科学のパラドックス」 勁草書房 2009年 2)高橋澪子 「心の科学史:西洋心理学の背景と実験心理学の誕生」 講談社学術文庫 2016年 3)エドワード・O・ウィルソン(山下篤子 訳) 「知の挑戦:科学的知性と文化的知性の統合」 角川書店 2002年 4)金杉武司 「心の哲学入門」 勁草書房 2007年 5)池谷裕二 「進化しすぎた脳」 朝日出版社 2004年 6)池谷裕二 「単純な脳,複雑な『私』」 朝日出版 2009年 7)理化学研究所脳科学総合研究センター(編) 「脳研究の最前線(上・下)」 講談社ブルーバックス 2007年 8)小此木啓吾 「フロイト」 講談社学術文庫 1989年 9)ラッシェル・ベイカー(宮城音弥 訳) 「フロイト:その思想と障害」 講談社新書 1975年 10)下條信輔 「サブリミナル・マインド:潜在的人間観のゆくえ」 中公新書 1996年 11)ダニエル・カーネマン(村井章子 訳) 「ファスト&スロー(上・下)」 早川書房 2014年 12)杉山尚子 「行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由」 集英社新書 2005年 13)島宗 理 「使える行動分析学:じぶん実験のすすめ」 ちくま新書 2014年 14)道又 爾 他 「認知心理学―知のアーキテクチャを探る 新版」 有斐閣 2011年 15)リチャード・ドーキンス(吉成真由美 訳) 「進化とは何か」 早川書房 2014年 16)リチャード・ドーキンス(垂水雄二 訳) 「進化の存在証明」 早川書房 2009年 17)安藤寿康 「心はどのように遺伝するか:双生児が語る新しい遺伝観」 ブルーバックス 2000年 18)長谷川寿一・長谷川眞理子 「進化と人間行動」 東京大学出版 2000年 19)小田 亮 「ヒトは環境を壊す動物である」 ちくま新書 2004年 20)海外大学のオープンコース:例えばOpen Yale Course "Introduction to Psychology (with Paul Bloom)" URL: https://oyc.yale.edu/introduction-psychology/psyc-110 *動画に加え逐語録(英語のみ)がある

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