翻訳論*
外国語学部
FLG61200
コース情報
担当教員: 河野 万里子
単位数: 4
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 月4, 水3
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業参加
リアクションペーパー
授業内期末試験
授業期間中
その他
欠席10回で不合格とする。遅刻(10分以上)10回で欠席1回とする。 原則として,授業内期末試験未受験の場合は不合格となる。 ただし就活,教育実習,通院など,特段の事情については考慮するので,必ず連絡のこと。
詳細情報
概要
ー翻訳の基礎となる技術やコツを,例文や短文での演習を通して実践的に身につけていく。 ー応用として,Haruki MURAKAMIの短編'Firefly’を訳していく。文芸翻訳の面白さを実感するとともに,いわゆる「逆翻訳」を行うことで,日本語の表現や文体についても考える。(翻訳について自身の力をつけ,表現の幅も広げていくため,先に日本語版を見ることは厳禁) ー表現や文体の検討については,はじめは講師が解説するが,慣れてきたら2~4名程度の小グループに分かれて行い,自由に検討し合ったものを全体で確認する。 ―翻訳の各領域の第一線で活躍中の方々をゲスト講師に招き,翻訳について総合的に考えつつ,専攻言語圏以外の文化にも視野を広げていく。言語としては英語,ドイツ語,フランス語,イスパニア語,ポルトガル語,ロシア語,オランダ語,朝鮮/韓国語に触れ(英語以外の言語はわからなくても問題ない内容),ジャンルとしては文学,エンタテインメント(ミステリ),ビジネス/ノンフィクション,映像字幕,児童書,絵本,紙芝居,さらには編集出版,翻訳会社経営についても触れる。
目標
1)翻訳の基礎技術を修得する。 2)文芸翻訳や日本語での表現について理解を深め,単なる和訳ではなく,読み手の心に届く訳文を目指せるようになる。 3)ゲスト講師の方々のお話から,各言語圏での翻訳事情や日本との文化交流,さまざまなジャンルの翻訳,編集出版,翻訳会社の経営などについても視野を広げ,翻訳の意義について学び,考える。
授業外の学習
1)Haruki MURAKAMI 'Firefly'について,次回授業の課題箇所(2パラグラフ程度)を訳しておく。(予習) 2)授業で行った翻訳について復習する。 3)ゲスト講師の回は,お話についての感想や考え,学んだことなどをリアクションペーパーに簡潔にまとめる。
所要時間: 予・復習合わせて190分程度
スケジュール
- イントロダクション:自己紹介,講義内容とゲスト講師陣の紹介,翻訳のジャンルについてなど ※以下は予定であり,授業の進捗状況により各テーマの回数は変更することがありうる。
- 翻訳とは:英文和訳と翻訳の違い~例文を使いながら
- 小説の一場面を訳してみる~描写,会話,動作,擬音語に注意しながら
- 翻訳の基礎(1)所有格の訳し方 Haruki MURAKAMI 'Firefly'(1)小説の冒頭を訳す
- 翻訳の基礎(2)無生物主語の訳し方 'Firefly'(2)背景の描写,人物描写,会話を訳す
- ゲスト講師(英語翻訳,文学・児童書)金原瑞人先生 「いま,バンド・デシネとグラフィック・ノベルが熱い」
- .ゲスト講師(ポルトガル語翻訳)木下眞穂先生 「ポルトガルの絵本,翻訳の裏側」
- .ゲスト講師(編集出版)駒井稔先生 「『古典新訳文庫』誕生秘話~古典はいつも新しい」
- .翻訳の基礎(3)関係代名詞の訳し方~補い方,切り方 'Firefly'(3)情景描写,会話を訳す
- 翻訳の基礎(4)関係代名詞の訳し方~分解の仕方 'Firefly'(4)微妙な心理を訳す
- ゲスト講師(スペイン語翻訳)宇野和美先生 「スペイン語の出版翻訳の世界」
- 翻訳の基礎(5)形容詞の訳し方~no,many,much,little 'Firefly'(5)過去の回想を訳す
- ゲスト講師(英語,字幕翻訳・翻訳会社経営)山下奈々子先生,花田達矢先生 「字幕翻訳の面白さ」
- ゲスト講師(英語,文学・ミステリ・ノンフィクション)加賀山卓朗先生 「フィクションとノンフィクションの訳し方はちがうのか?」
- 翻訳の基礎(6)副詞の訳し方 'Firefly'(6)小説のテーマを意識して訳す
- 文芸翻訳の実際(フランス語,英語翻訳)河野万里子 「私はこうして新訳した~『星の王子さま』の場合」
- ゲスト講師(英語,ビジネス/ノンフィクション翻訳)井口耕二先生 「ビジネス書の翻訳について~『スティーブ・ジョブズ』を例に」
- 翻訳の基礎(7)副詞に訳したほうがいい形容詞~all,every,each,both 'Firefly'(7)心の声を訳す
- ゲスト講師(オランダ語,英語翻訳)野坂悦子先生 「オランダと日本~絵本と紙芝居の文化を考える」
- 翻訳の基礎(8)比較の表現の訳し方 'Firefly'(8)クライマックスを訳す
- ゲスト講師(ドイツ語翻訳)若松宣子先生 「ドイツ語圏の児童文学」
- 翻訳の基礎(9)時制についての注意点 'Firefly'(9)手紙文を訳す
- ゲスト講師(ロシア語 研究)南平かおり先生 「日本児童文学界におけるロシア・ソ連文学作品の受容について」
- 翻訳の基礎(10)受動態の処理 'Firefly'(10)主人公の衝撃を訳す
- ゲスト講師(朝鮮語翻訳,韓国文学)斎藤真理子先生 「日本における朝鮮半島の文学の翻訳の歴史」
- 翻訳の基礎(11)仮定法について 'Firefly'(11)小説のラストを訳す
- 翻訳の基礎(12)話法について 授業全体の質疑応答など
- 授業内試験 全体のまとめ
教科書
テキストは毎回コピーして配布する。
参考書
『翻訳書簡~「赤毛のアン」をめぐる言葉の旅』上白石萌音・河野万里子 NHK出版(2022年)