グローバル・ヒストリー入門

外国語学部

FES76100

コース情報

担当教員: 飯島 真里子

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 金5

形式: 対面授業

レベル: 200

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

10%

リアクションペーパー

50%

授業内期末試験

授業期間中

20%

小テスト等

20%

詳細情報

概要

本講義は,近年歴史学の分野で注目されているグローバル・ヒストリーの視点を用いて,地域・社会の「過去」について考察することを目的としています。グローバル・ヒストリーの特徴は,一国史の枠組みにとらわれず,国境を移動するモノ・人・宗教・思想・病気などを研究対象とすることで,地域・世界の「繋がり」を歴史的に明らかにしていくプロセスにあります。ここでの歴史的探求は,単に過去を理解することではなく,私たちが生きる現代との「繋がり」を見いだすプロセスでもあります。今回の講義では,ヨーロッパ,アフリカ,南北アメリカ,アジア,太平洋地域などを舞台とし,それぞれの地域の専門家が国境を超えた地球規模でのテーマや事例を取り上げ,みなさんと歴史をグローバルな視点から学ぶとともに,歴史を現代社会で学ぶことの有効性について考えていきます。

目標

1. 歴史学の視点・アプローチ・テーマに関する理解を深める 2.歴史学が自分の興味関心・研究課題にどのような意義があるのかについて考える 3. 現代を過去とのつながりから捉えることで,今日の社会をめぐる諸問題に対する複眼的視点を養う

授業外の学習

1)予習課題(主に教科書の一章を読むなどのリーディング課題)(100mins) 2)講義後の課題(ライティング)(90mins)

所要時間: 190分

スケジュール

  1. 「はじめに」(飯島真里子,英語学科) 太平洋地域のコーヒー栽培から考えるグローバル・ヒストリーを事例として,本講義のイントロダクション(方法論,講義の流れ,評価等)を行います。
  2. 「国民国家という概念」(内村俊太,イスパニア語学科) 「国民国家という概念」:この授業では,国民国家(Nation State)という分析概念を試論的に整理します。私たちが「国」という日本語を何気なく使う時,そこにはどのような諸側面が入り込んでいるかを考えます。
  3. 「ネイションの多義性」(高橋暁生,フランス語学科) フランス東部アルザス地方の近現代史を,小説,ポスター,絵画などを使いながら概観することで,「ネイション」の多義性,ナショナル・アイデンティティの多様なあり方について一緒に考えましょう。
  4. 「国民国家を超えて」(飯島,英語学科) 第二次世界大戦中,フランス東部ロレーヌ地方でドイツ軍と戦った日系二世兵の戦争経験について見ていきます。米国という国民国家のために従軍した日系兵たちは,ロレーヌ地方ではどのように見られたのでしょうか。国民国家とローカル社会,ナショナル・アイデンティティとエスニシティの関係性について考察します。
  5. 「衣類とグローバル・ヒストリー」(1) (杉浦未樹,法政大学) この講義では「サブサハラアフリカ」と「東アジア」を視点に,衣類のグローバルな歴史を考えていきます。両地域はファッションの中心地とはみなされませんが,その衣類には外の地域との交流と接触の歴史が色濃く反映されています。第一回目は19世紀以降,オランダやイギリスや日本が輸出し「アフリカ風」とされた布(「アフリカンプリント」)の発達をみながら,グローバルなファッションを考えます。
  6. 「衣類とグローバル・ヒストリー」(2) (杉浦,法政大学) 第二回目は,19,20世紀のグローバルな人々の移動と衣類との関係性をみていきましょう。手がかりとするのは,1840年代以降1940年ごろまで北南米,東南アジア,中国全土で契約労働に従事した中国人苦力の頭頂部分のとんがった麦わら帽子(苦力帽)です。同時期の日本,中国,台湾は,世界的な麦わら帽子ブームの一役を,生産と消費のどちらの面でも担っていました。東アジアから世界を移動した人々と,流通した帽子がどのように絡み合うかみていきましょう。
  7. 「グローバル・イシューとしての水」(岩崎えり奈,フランス語学科) 21世紀の水資源問題について,エジプト西部砂漠のオアシスなどを具体的な事例に取り上げて考察します。
  8. 「ジェンダーからみるグローバル近代」(佐々木一恵,法政大学) 第1回目は,ジェンダーの視点から思想・概念のグローバルな拡がりについて考えていきます。具体的には,エジプト,中国,イギリス,アメリカにおける女子教育とジャンヌ・ダルクに代表される女性英雄列伝の事例を取り上げ議論していきます。
  9. 「ジェンダーからみるグローバル近代」(佐々木一恵,法政大学) 第2回目は,20世紀初頭に中国に渡り「新しい女」を育成するべく女子教育に携わったアメリカ人女性の経験を取り上げます。この回では,第1回目の授業で取り上げた,「世界史のパラダイム」と「ジェンダー」の関連性,また「進んだ国」=オリジナル,「遅れた国」=コピーの矛盾を実例から捉えていきます。
  10. 「東アジアのアメリカ女性宣教師とグローバル・ヒストリー」(石井紀子,英語学科) 皆さんにとって身近な女子校の多くは実は日本に100年以上前にやってきたアメリカの女性宣教師が創ったものだということを知っていますか。この回では日本,中国,韓国にアメリカ女性宣教師がもたらした教育をその国の女性がどのように活用していったのかを比較しながら,女子教育をめぐるグローバル・ヒストリーについて考えていきます。"
  11. 「ハラール・フードを考える」正山耕介(ソフィア・キャンパスサポート) 身近な学生食堂をきっかけに,ハラール認証制度や,日本におけるハラール・フードの普及について考えていきます。
  12. 「移動するヒトとモノ」(飯島,英語学科) ハワイ,ブラジルをはじめ,戦前の日本人の多くは第一次産業(農業や漁業など)に従事しており,コーヒー栽培も行っていました。私たちが現在消費しているコーヒーがどのように「栽培者」としての移民の生活を支えて,また変えていったのか,移動,モノ,ヒトをキーワードにグローバル・ヒストリーを描いてみます。
  13. 「海賊のグローバル・ヒストリー」(太田淳,慶應義塾大学) 皆さんは海賊を遠い過去の,半ば空想上の人びとと考えるでしょうか。この回では,アジアにやって来たヨーロッパ商人が自身の正当化のために特定の人びとを海賊と呼んだことや,植民地支配を始めたヨーロッパ人が,海賊と協力しながら植民地や協力的な現地国家を形成していたことを理解し,アジアにおける「近代」の立ち上がりを考察します。
  14. まとめとテスト(飯島,英語学科)

教科書

アメリカ・カナダ研究所ら編『グローバル・ヒストリーズーナショナルを越えて』(ぎょうせい,2018年)

    参考書

    書籍情報はありません。

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