北米地域研究入門A-2

外国語学部

FES75900

コース情報

担当教員: 庭山 雄吉

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 木5

形式: 対面授業

レベル: 200

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

5%

授業参加

5%

授業内期末試験

授業期間中

90%

その他

欠席を5回した場合は,単位を取得することはできません。

0%

詳細情報

概要

地域研究のベースになっているものは,「土地」と「人」です。本講義ではカナダを対象にします。「土地」にかんしては,カナダの地理,地誌を対象にします。「人」にかんしては,主にカナダの先住民族,エスニック・マイノリティ,移民を対象とします。カナダ自治領(1867年)が誕生する以前から英仏の入植者達は毛皮交易に着手することで先住民族とかかわりを持っていました。入植者達にとっては商品であり,先住民にとっては必需品である毛皮が両者を媒介する役割を担っていました。先住民族が毛皮交易においてどのように介在していたのかを考えます。ある先住民族はカナダ自治領が西部へと拡大する過程で反乱をおこしました。当時の政府は同化政策の一環として19世紀後半から寄宿学校を開設し,先住民族の子供達に対して英語(地域によっては仏語)の習得,キリスト教への入信,カナダの生活習慣の習得を身に付けさせました。寄宿学校制度の問題点と1990年代からの補償および謝罪要求について考えます。現在においても先住民族固有の土地所有にかんする問題が州,カナダ政府との間で続いています。先住民族と土地との関係についても本講義の題材とします。カナダは多民族国家であり,多くの国々・地域から移民を受け入れる移民国家です。1988年に多文化主義法が成立しました。多文化主義法の制定に至る過程においてエスニック・マイノリティに属する人々はどのような主張を持っていたのでしょうか。多文化主義の萌芽から多文化主義法成立までの過程を概観し,エスニック・マジョリティとエスニック・マイノリティの関係について考えます。エスニック・マイノリティについては,アジア系(日系,中国系,インド系)の人々に焦点をあて,各々の辿ってきた歴史的背景を探ります。本講義全体を通じてカナダの先住民族およびエスニック・マイノリティを取り巻く諸問題について歴史的視座をもとに講義し,受講生に考える機会を提供したいと思います。復習としては講義で紹介する参考文献を参照し,受講生自身が関心ある領域についてさらに探究を深めてください。この授業ではアクティブ・ラーニングの一環として,映像資料をもとにディスカッション(1回)を行います。授業では,双方向型の授業を基本とし,毎回できるだけ多くの受講生から意見を求めていきます。受講生には受動的ではなく積極的な参加を期待します。

目標

本講義の到達目標は,第一に,カナダの各地域の特徴を理解すること。第二に,カナダの先住民族にかんする過去と現代の問題点を理解すること。そして第三に,カナダにおける多文化主義の現状と問題点を把握することです。

授業外の学習

この講義では基本的には予習の必要はありません。復習としては講義で紹介する参考文献を参照し,受講生自身が関心ある領域についてさらに探究を進めてください。 授業で取り上げた内容について配布資料および参考文献を熟読し,理解を深めてください。

所要時間: 概ね200分

スケジュール

  1. ※以下は予定であり,授業の進捗状況により各テーマの回数は変更することがありうる。 イントロダクション 講義全体の概要説明
  2. カナダ自治領(1867年)の成立過程 カナダ自治領の誕生について北米とヨーロッパの歴史を紐解き概説します。
  3. 毛皮交易のはじまり 先住民族および入植者がともに必要であったビーバーの毛皮の重要性について解説します。
  4. 毛皮交易の発展と衰退 毛皮交易の進展に伴う交易ルートの拡大,さらに交易の衰退について講義します。
  5. カナダの先住民族(1) 寄宿学校問題(前編) なぜ,先住民族の子供達を対象にした寄宿学校の設立が必要であったのか。その背景について説明します。
  6. カナダの先住民族(2) 寄宿学校問題(後編) 第二次世界大戦後の寄宿学校の減少と閉鎖,その後の寄宿学校にかんする諸問題について解説します。
  7. カナダの先住民族(3) 先住民族の権利 先住民族が有する先住民族の権利について検討します。具体的には,オイルサンド(タールサンド)開発を題材に資源開発が先住民族の暮らし(生業)にどのように影響を与えているのかを検討します。
  8. 第2回~第7回までの検討(グループに分かれてディスカッションを行います。)
  9. カナダの多文化主義 はじめに多文化主義の概念を説明し,カナダにおいてどのような過程を経て多文化主義が導入されたのかを解説します。
  10. プリンスエドワードアイランド州 カナダで最も面積が小さく最も人口の少ない州ですが,歴史の深い州です。小説『赤毛のアン』の舞台としても知られるこの州について,歴史的側面から講義します。
  11. ケベック州 フランス語を公用語とする独自の文化を保持する州です。ケベック州の独自性について歴史を紐解きつつ解説します。
  12. オンタリオ州 カナダで最も人口が多く,経済の中心でもある州です。最大都市トロントにおけるエスニック・タウンを中心に多様な文化の共存と実像について解説します。
  13. ブリティッシュコロンビア州 太平洋に面し,古くからアジアからの移民が定住した州です。アジアからの移民の歴史を中心に講義します。
  14. 授業の総括

教科書

特定のテキストは使用しませんが,ほぼ毎回,各回のテーマについての資料を配布します。同時に,授業内で参考文献についても紹介します。

    参考書

    • 『はじめて出会うカナダ』

      著者: 日本カナダ学会(編)

      出版社: 有斐閣,2009

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