北米地域研究入門A-1
外国語学部
FES61400
コース情報
担当教員: 石井 紀子
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 水5
形式: 対面授業
レベル: 200
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
小テスト等
その他
出席はリアペの提出でみなす。出席は20点満点。 1回欠席ごとに20点から5点づつ引かれる。 小テスト(宿題)は80点満点。8回の小テストを各10点満点で評価する。
詳細情報
概要
本講義は北米地域(主としてアメリカ合衆国とカナダを指す)について,多角的かつ学際的な視点から学ぶための入門講座である。北米地域は,日本のみならず,世界各地の政治,経済,社会や文化に大きな影響を及ぼし,世界をリードしてきた。今回の講義では,政治学,経済学,文化心理学,文化人類学,歴史学の専門家が,それぞれの学問分野のアプローチを用いて,対外的には覇権国家として君臨するアメリカ合衆国をかかえ,国内的には多文化共生を模索してきた北米地域がどのようにその意味を模索し,内実化してきているか,内外からの視点を用いて検討する。今年度の講義では外から北米地域の意味を相対化する視点として,アジア太平洋,ヨーロッパ,アフリカ,ロシアとの関係も視野に入れる。北米地域研究の魅力や意義について考え,議論するきっかけを提供したい。
目標
北米地域研究に関する基礎地域と様々なアプローチの習得
授業外の学習
各教員が指定する予習・復習を行うこと。 予習(教員が指定する資料を読んでくること)ーおよそ90分 復習(授業中にとったノートと授業内リアクションペーパーや小テストでの回答を振り返り,再度指定された資料と照らし合わせながら,自身の批判的分析と考察を深める。)ーおよそ100分
所要時間: 授業一回あたり190分以上の予習復習の学習
スケジュール
- イントロダクション(石井紀子,英語学科)
- 「アーミッシュからみる北米地域」石井紀子(英語学科) 北米地域には自動車や電気を否定し,近代文明に背を向けながら19世紀さながらのライフスタイルを守っているアーミッシュというキリスト教一派の人々がいます。発祥の地ヨーロッパではほぼ消滅したのに,なぜ近代文明の最先端の地,北米地域では20万人にまで増え続けているのでしょうか。アーミッシュの事例を通してアメリカにおける信教の自由,政教分離の問題を考えていきます。
- 「マリアナ諸島から見るアメリカ」竹田安裕子(英語学科) 日本から飛行機で約4時間の距離にある,グアム,サイパンなどのマリアナ諸島は,現在アメリカ合衆国の領土となっています。マリアナ諸島の先住民であるチャモロの人々は,歴史的に日米の植民地支配,戦争,軍事基地化を経験してきました。この授業では,チャモロの人々の歴史的経験を通して,周縁の領土から見る「アメリカ」とは何かを問い,アメリカの帝国主義的な側面を考察していきます。
- 「公民権運動の歴史と歴史叙述—ローザ・パークスを例に」坂下史子(英語学科) 1955年,アメリカ南部アラバマ州で人種隔離されたバスの座席を譲ることを拒否して逮捕され,バス・ボイコット運動の火付け役になったとされるローザ・パークス。本講義では,「公民権運動の母」とも呼ばれるパークスを例に,公民権運動の歴史がこれまでどのように語られてきたかを確認した後,近年こうした語り(歴史叙述)やイメージ(歴史像)がどのように修正されているかを見ていきます。また,公民権運動に関するこれまでの歴史叙述の問題についても考えます。
- 「今⽇を⽣きる北⽶地域の先住⺠」 水谷裕佳(グローバル教育センター) 北⽶地域には多様な先住⺠⽂化が栄え,現在でも同地域には多くの先住⺠の⼈々が⽣活している。先住⺠の⼈々に関する画⼀的なイメージはどのように⽣まれたのか,そして今日における彼らの現実的な姿とはどのようなものであるのか,講義や映像を通じて紹介する。
- 「先住民学生と北米地域の大学」 水谷裕佳(グローバル教育センター) 北米地域の大学では,多くの先住民学生が学んでいる。さらに,多くの大学では,先住民族の歴史や社会,文化等について,先住民以外の学生も学べる授業が開講されている。その現状を紹介し,先住民族と教育の関係性について考える。
- 「北米地域の交差点としてのニューオーリンズ」山中美潮(英語学科) アメリカ合衆国ルイジアナ州にあるニューオーリンズは,1718年,チティマシャの人々が住んでいた土地にフランス人が建設した街であり,ミシシッピ川とメキシコ湾を通じ北米大陸と中南米・大西洋を結ぶ玄関口としての役割を果たしてきた。またニューオーリンズは19世紀前半にはアメリカ最大規模の国内奴隷市場を持つと同時に多くの自由黒人が住まう都市でもあった。本講義では「環大西洋世界」を切り口に,ニューオーリンズの事例から,アメリカの奴隷制の歴史や「自由」の持った意味について考えたい。。
- 「環太平洋移民史から見る南北戦争」山中美潮(英語学科) 日米が人の移動を通じてつながっていた知られざる歴史を考える。 (参考 菅(七戸)美弥『南北戦争を戦った日本人-幕末の環太平洋移民史』筑摩書房,2023年。)
- 「日本人の移民先としての北米地域」飯島真里子(英語学科) 19世紀末から,北米地域(米国・カナダ)は多くの日本人移民を受け入れてきました。日本人が移民した背景,移民先での生活・労働状況,1920年代の排日運動の経緯について考察しながら,移民研究から北米地域について学んでみましょう。
- 「ハワイー理想的な多民族社会?」飯島真里子(英語学科) 太平洋に浮かぶハワイ諸島には「楽園」のイメージがつきまといますが,今回の講義では歴史,人種/エスニック関係,産業構造を検討することにより,そのイメージを批判的に考察します。また,現在,ハワイから北米地域を研究する意義についても一緒に考えてみましょう。
- 「ホワイトネス(白人)の心理学」出口真紀子(英語学科) 北米では「白人」という人種的カテゴリーが設けられているが,最初から「白人」というカテゴリーがあったわけではない。その歴史的背景を学び,「白人」であるがゆえに伴う権力・特権,および人種的マジョリティであることから生じるレイシャル・アイデンティティ形成について考える。
- 「北米の人々の心理学」出口真紀子(英語学科) 北米の人々と日本人の間には心理学的にどのような違いがあるのだろうか。文化的自 己観の違いをはじめとする,様々な心理学の概念や研究を紹介しながら考える。
- 「米ロ関係をとらえる視点」安達祐子(ロシア語学科) アメリカとロシア両国の関係の展開と背景,および国際関係への影響について考えていく。
- まとめと振り返り 石井紀子(英語学科)
教科書
テキスト(教科書)は以下をご購入ください。 他,適宜担当教員がムードル上で資料を提供する。
北米研究入門2:「ナショナル」と向き合う
著者: 上智大学アメリカ・カナダ研究所
出版社: ぎょうせい,2019年
参考書
書籍情報はありません。