アフリカ国際協力論

総合グローバル学部 - 総合グローバル学科(教授言語:日本語)

BGS61400

コース情報

担当教員: ンジャイ林 恵美子

単位数: 2

年度: 2024

学期: 春学期

曜限: 金4

形式: 対面授業

レベル: 300

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

20%

リアクションペーパー

40%

レポート

40%

詳細情報

概要

1950~60年代に多くのアフリカ諸国が独立を果たし,発展の道を目指してきた。しかし,その道のりは険しく,1980年代は世界銀行/IMFの主導による構造調整政策,1990年代は債務削減と貧困削減戦略,2000年代はMDGsと人間の安全保障などの様々な開発アプローチを通じた国際協力が行われてきた。 2000年代中盤以降,資源価格の上昇に伴い,顕著な経済発展を達成したアフリカは「最後のフロンティア」として国際社会の注目を集めることとなった。しかし,2008年に発生した世界金融危機とその後の資源価格の下落に伴い,資源国の成長が減速,一部の非資源国の経済は比較的順調ではあるものの,アフリカ全体の経済発展は停滞した。また,民主化の停滞とテロ拡散などに見られる国家体制の脆弱性,食料輸入に依存し,増加する人口を養いきれない農業生産,急増する若年労働人口に追い付かない未発達な産業基盤,貧弱な社会サービス(教育や保健医療など)の供給体制,それに伴う人的資源開発の停滞など,その開発基盤は依然として脆弱と言わざるを得ない。このような状況のもと,Covid-19の感染拡大とウクライナ危機は,脆弱なアフリカ経済と社会に大きな影響を与えた。2020年には地域全体として初めてマイナス成長となり,債務危機が表面化した。また,食料・肥料の供給不足や価格高騰により,食料安全保障が改めて大きな課題となっている。さらに,気候変動により干ばつや災害が頻発するなど,アフリカは複合的な危機に直面している。 他方,将来に目を向ければ,アフリカの人口は2050年に約25億人,2100年には40億人を超え,それぞれ世界の4人に1人,2.5人に1人がアフリカ人となることが予想されている。アフリカ諸国は巨大な市場として,また,国連加盟国数の4分の1を占めるいわゆる「グローバル・サウス」としての存在感を高め,国際社会における一大勢力として存在感が高まることは間違いない。 アフリカが増加し続ける人口や豊富な天然資源をアドバンテージとして活用し,持続的な発展を達成していくためには,上述の様々な課題を乗り越えていく必要があるが,そのためには国際社会の協力が不可欠である。 本講義では,大きな転換期を迎えているアフリカを多角的な視点から捉えることを通じて,その多様性を踏まえつつ,共通する課題を明らかにし,アフリカが自立的且つ強靭な発展を遂げていくための国際協力の在り方を考察したい。さらに,これらの講義を通じて,受講者が自らアフリカ各国が抱える様々な課題を分析,解決に向けたアプローチを導き出す能力を培うことを目標とする。 なお,本講義は,国際協力機構(JICA)との連携により実施される。開発理論を踏まえつつ,実務者の現場の実践に基づくアフリカ開発の現状と課題の議論をベースとする。講義によっては,事前に課題が提示され,授業中に受講者が発表する形式も採用する。

目標

本講義では,大きな転換期を迎えているアフリカを多角的な視点から捉えることを通じて,その多様性を踏まえつつ,共通する課題を明らかにし,アフリカが自立的な経済発展を遂げていくための国際協力の在り方を考察する。さらに,これらの講義を通じて,受講者が自らアフリカ各国が抱える様々な課題を分析,解決に向けたアプローチを導き出す能力を培うことを目標とする。

授業外の学習

毎回の授業後は以下の学習(合計 190 分以上)を行うことが求められる。 ・ムードルにリアクションペーパーを投稿する。(10 分) ・授業資料や講義で取り扱う課題に関する参考文献,WEBサイト等を,授業の前後に目を通すことで,授業内容の理解を深める。(60 分) ・複数の参考文献を読み,レポート課題の準備を進める(問題提議,情報収集,担当講師への質問等)。(120 分) 【主な参考WEBサイト】 外務省/サブサハラ向けODA http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/region/africa/index.html 外務省/東京アフリカ会議(TICAD) http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ticad/index.html 外務省/持続可能な開発目標(SDGs) http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/doukou/page23_000779.html JICA/国別取組 https://www.jica.go.jp/oda/regions/africa.html JICA/課題・事業別情報 https://www.jica.go.jp/activities/index.html 世界銀行/国別戦略レポート http://www.worldbank.org/en/projects-operations/country-strategies

所要時間: 授業 1 回あたり 190 分以上。

スケジュール

  1. イントロダクション 授業の全体像(目的・進め方など)について説明した後,アフリカの現状(文化や人々の日常生活なども含める)と課題,日本との関係を概観するとともに,対アフリカ協力を実践する独立行政法人国際協力機構(JICA)の機能・役割を確認する。 また,学期末の課題レポートのテーマについても説明する。具体的には,特定の国あるいは地域を選定した上で,開発課題を分析し,自ら考える解決アプローチを提案することを想定している。
  2. 近現代アフリカの歴史概論 アフリカの多様で豊かな歴史を有しているが,現代アフリカを考察するうえで不可欠な国際社会との関係性(奴隷貿易,植民地,独立などの動向)を概観する。
  3. 国際的な対アフリカ協力の動向 対アフリカ協力のアプローチの変遷(構造調整,貧困削減戦略,人間の安全保障,MDGs/SDGsなど),及びマルチドナー(国連・世銀など),主な先進国ドナー(米英仏など)と新興ドナー(中国など)の動向について概観する。
  4. 日本/JICAのアフリカ協力(TICADプロセスを中心に) 1993年より継続的に開催されているTICAD(アフリカ開発会議)における議論を振り返り,日本のアプローチの特徴などにつき概観する。
  5. 地域別の課題と事例(南部アフリカ) アフリカ各地域から一か国を取り上げ,政治・経済情勢について概観し,国を見る眼を涵養する。
  6. 地域別の課題と事例(東部アフリカ) 同上
  7. 地域別の課題と事例(中西部アフリカ) 同上
  8. セクター別開発戦略:開発途上地域の経済成長の基礎及び原動力の確保(Prosperity) 都市・地域開発,資源・エネルギー,民間セクター開発に関する課題,協力の実際について解説する。
  9. セクター別開発戦略:開発途上地域の人々の基礎的生活を支える人間中心の開発(People) 保健医療,栄養改善,教育に関する課題,同セクターに対する協力の実際について解説する。
  10. セクター別開発戦略:普遍的価値の共有,平和で安全な社会の実現(Peace) 不安定な情勢が続く,サヘル地域,アフリカの角地域等の現状とともに,平和構築の理論と実際を解説する。
  11. セクター別開発戦略:地球規模課題への取組を通じた持続可能で強じんな国際社会の構築(Planet) 気候変動,自然環境保全,水資源分野の課題と協力の実際について解説する。
  12. 地域統合 2021年からアフリカ大陸自由貿易圏が運用開始されている中,膨大な需要のあるアフリカのインフラ開発(ハード/ソフト)の課題を含め,地域統合に向けた課題と協力の実際について解説する。
  13. ビジネスと開発 アフリカにおいて益々重要性を増している民間投資,貿易などのビジネスの実際とODAとの連携の状況について解説する。
  14. 最終レポート発表と討論 全13回の講義を踏まえ,最終レポートの発表と討論を行い,総括する。

教科書

講義全体をカバーする単一のテキストはないため,特定の教科書は使用しないが,以下の3冊は必読のこと。

  • 『ルワンダ中央銀行総裁日記』

    著者: 服部正也

    出版社: 中央公論新社,2009年(中公新書)

  • 『経済大陸アフリカ』

    著者: 平野克己

    出版社: 中央公論新社,2013年(中公新書)

  • 『アフリカを見る アフリカから見る』

    著者: 白戸圭一

    出版社: 筑摩書房,2019年(ちくま新書)

参考書

講義を網羅的に扱う参考書はないが,アフリカに関する理解を深める上で以下の書籍は有益。

  • 『開発と国家 アフリカ政治経済序説』

    著者: 高橋基樹

    出版社: 勁草書房,2010年

  • 『新書アフリカ史』

    著者: 宮本正興,松田素二編

    出版社: 講談社,2018年(講談社新書)

  • 『社会人のための現代アフリカ講義』

    著者: 遠藤貢・関谷雄一編

    出版社: 東京大学出版会,2017年

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