東南アジアの教育と文化

総合グローバル学部 - 総合グローバル学科(教授言語:日本語)

BGS59400

コース情報

担当教員: 久志本 裕子

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 木3

形式: 対面授業

レベル: 300

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

出席状況

20%

授業参加

10%

リアクションペーパー

20%

レポート

30%

小テスト等

20%

その他

授業参加は,授業後の振り返りコメント(リアクションペーパー),提出物と,Moodle上でのディスカッションへの参加をもって評価します。 基礎的な知識の定着を確認するための小テストをMoodleを使用して数回行います。

0%

詳細情報

概要

この講義の目的は,東南アジア各地のローカルな教育の在り方と,植民地化を通じて広まった近代的教育の在り方の複雑な関係を読み解くことを通じて,私たちにとっての教育とは何かを考え直すことです。 SDGsの「質の高い教育をみんなに」に代表されるように,貧しい人々も,障害を持つ人々も平等に,基礎的な教育を受けることができるよう保証することは非常に重要かつ難しい課題です。東南アジアは全体としては初等,中等教育の就学率はかなり伸びていますが,それでも自分の能力を十分に開花するだけの教育機会に恵まれない人々は数え切れません。このような状況を見聞きすると,「豊かな日本」で教育を受けた「恵まれた」私たちは,直感的に「助けなくちゃ!」という使命感を持つかもしれません。 しかし,「すべての子どもたちに」本当に必要な教育とは何でしょうか。普遍的に価値のある,だれもが学ぶべき知識とは何でしょうか。私たちがイメージする「学校」が広まったのは日本でも一世紀少し前のことにすぎませんが,それより前,東南アジアの人々はどのようにして学んでいたのでしょうか。そこで学んでいた知識や価値は,近代的学校教育の普及によってどこに行ったのでしょうか。そのように考えると,私たちは「恵まれて」いて,「彼ら」にはそれが欠けている,という考え方には明らかに問題があることが見えてきます。 これらの問題を東南アジアの「ローカル」な視座から具体的に考えることを目指すこの講義では,文化人類学と比較教育学を主な視点として,東南アジアの各地の学校教育の現状と,伝統的な学びの文化が近代化,グローバル化の中で変化してきた過程を概観します。似たような構造を持つ普通の学校だけを取ってみても,各地で大きな違いがあります。こうした違いを実感をもって知るには,文献に加えて,画像,映像等の視聴覚資料や,異なる教育を経験してきた人々の生の声を聴くことが不可欠です。 このため,一学期のうち少なくとも一度は,ZOOMで東南アジアの教育に直接かかわる人々とコミュニケーションをとる機会を設けます。また,期末レポートでは研究対象とする国,教育事象を定めて,それに関する直接的な経験を持つ人人々が発信した資料を集め,その経験を対象社会における教育の状況を踏まえて解釈する,という内容を課します。日常の中で,関係のあるニュースをフォローしたり,ウェブサイト,ソーシャルメディアなどを意識して探して情報収集をしてみてください。

目標

1) 東南アジアの近代的学校教育の歴史と現状について基礎的な状況を説明できる。 2) 東南アジアの諸文化の中に,近代的学校とは異なる学びのあり方が存在することに気づく。 3) 東南アジアのローカルな教育のあり方の特性と,東南アジアと日本に共通するグローバルな教育の問題の双方の側面から,関心のある地域の教育について情報を収集し,批判的に分析することができる。 4)自分自身の教育,学びの在り方について,どうしたら自分に力を与えると同時に,他者を排除しないような学びができるかを熟考する。

授業外の学習

予習,復習が必須です。授業への出席/動画講義の視聴に加えて,1回あたりの平均として,個人差はありますが約1時間の自習時間を想定しておいてください(1単位取得にかかる総学習時間が45時間という単位認定基準内での設定)。各回,Moodle上で必読文献,視聴覚資料,あるいは調べるべき事項等を指定し,基本的にワークシートを用意しますので,ワークシートに必要事項を記入する等の準備をして授業に臨んでください。予習を前提にディスカッション等を進めますので,準備をしていないと授業中の活動への参加が難しくなります。

所要時間: 190分

スケジュール

  1. イントロダクション:「教育」という言葉からイメージするもの
  2. 学校へ行くことはあたりまえ? 東南アジアの就学率
  3. 学校で何を学ぶのか 東南アジア各国の異なる学校教育
  4. 誰が,いつ,学校を作ったのか 植民地教育,近代的教育制度の形成
  5. 国家の教育がどのようにしてできたのか?-脱植民地化,ナショナリズムと教育
  6. ふりかえり: 東南アジアの近代的学校教育の形成と性質
  7. 近代的学校以前からある学びとその変容-イスラームの事例
  8. 近代的学校以前からある学びとその変容-仏教の事例
  9. 価値観をどこでどのように学ぶのか
  10. 東南アジアの大学との交流(詳細は未定。日時は9月末に確定)
  11. グローバル化は教育に何をもたらすか?:人,知識の国際移動
  12. グローバル化は教育に何をもたらすか?:知識の生産,流通の不均衡
  13. 東南アジアの教育におけるインクルージョンとエクスクルージョン
  14. ふりかえり:人に力を与え,排除しない教育とは?

教科書

授業時に指定します。

    参考書

    • アジア教育情報シリーズ2巻 東南アジア編

      著者: 牧貴愛編著・大塚豊監修

      出版社: 一芸社 2021

    • 変容するイスラームの学びの文化 マレーシア・ムスリム社会と近代学校教育

      著者: 久志本裕子

      出版社: ナカニシヤ出版 2014

    • 東南アジアのイスラームを知るための64章

      著者: 久志本裕子・野中葉

      出版社: 明石書店 2023

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