東南アジアのイスラームと社会
総合グローバル学部 - 総合グローバル学科(教授言語:日本語)
BGS59300
コース情報
担当教員: 久志本 裕子
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 水3
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: あり
他学部履修: 可
評価方法
出席状況
授業参加
リアクションペーパー
レポート
小テスト等
その他
出席はリアクションペーパーの提出をもってカウントします。事情はできる限り考慮しますが,欠席回数と評価は直結するものと考えてください。専門用語の理解などについての小テストをMoodleを使って3~4回ほど行います。「授業参加」には,予習課題,プレゼンテーションファイル等の提出物が含まれます。
詳細情報
概要
この授業では,⽂化⼈類学と地域研究の視点から,東南アジアにおけるイスラーム教徒(ムスリム)の様々な⽣き⽅をその社会的⽂脈の中で解釈していきます。 イスラームという対象は,日本だけでなく世界的にも誤解されたり,ネガティブなイメージでとらえられたりすることが非常に多いことには多くの方がお気づきだと思います。しかし,その要因は単にイスラームのことが知られていないことや,交流の機会がないことだけではありません。また,ネガティブなイメージをポジティブなイメージに置き換えれば済むという話でもありません。 イスラームに限らず,ある文化や集団に対する偏見が生み出され続ける背景には,日本であれば日本の社会,そしてグローバルな社会の大きな構造の問題があります。それはこの大学,この教室という場を共有する「私たち」の問題そのものでもあります。イスラームを研究対象として地域研究は,こうした社会の構造の問題を読み解く大きなヒントを与えてくれます。 この授業を通じて目指すのは,皆さん⼀⼈ひとりや,⽇本の社会⼀般の中に形成され,共有されているイスラームのイメージと,その根本にある「私にとっての当たり前」,そしてそれを生み出している社会の構造を批判的に問い直すことです。 このため,各⾃の認識や疑問点についての話し合い,⾃主的な情報収集,分析といったアクティブラーニングを多⽤して授業を進めます。学習活動に積極的に参加し,毎回のコメントシート提出と期末レポートを通じてその成果を表現することが評価の対象となります。ディスカッションに積極的に参加する意志がありながら,それが難しいという事情のある⽅は,できるかぎり参加しやすいように⼯夫をしますので授業の際にご相談ください。 授業の前半では,東南アジアのムスリムが今どのようなことを信じ,どのように⽣活をしているのかをイメージし,後半では今の東南アジア島嶼部の社会におけるイスラームの普及と発展の歴史的過程をふまえて,現在のグローバル化の中で起きつつある変化を捉えることを⽬指します。 講義の中ではマレーシアのムスリムの大学生とオンライン交流をする活動を予定しています。コミュニケーションの言語は英語になりますが,英語でのディスカッションに自信がない方も,「上手に」話すことよりも伝える,楽しむことを目指してみてください。毎年,この機会にSNSなどでつながり,その後も長く交流している例が見られます。ぜひ,そうした関係を活かして,授業の後には長期休暇などを利用して本格的なフィールドワークに出かけてみてください。
目標
1)イスラームをめぐって日本の社会に形成されている偏見に気づく。 2)東南アジアにおけるイスラーム教徒(ムスリム)の基本的な考え⽅と日常生活,多様な生き方を,自らの生き方と結び付けながら具体的にイメージできる。 3)イスラームの歴史的変容を踏まえて,現代の東南アジア各地の社会におけるイスラーム理解と実践を「近代以降の現象」として説明することができる。 4)文化人類学と地域研究の考え方をヒントに,ある「宗教」や「文化」に対する偏見・差別が生み出されるグローバル・ローカルな社会構造を読み解き,それにどう抗うかを考える。
授業外の学習
予習,復習が必須です。1回あたりの平均として,個人差はありますが約1時間の予習と,約30分ほどの授業後リアクションペーパー記入,その他プレゼンテーションの準備等を想定しておいてください(1単位取得にかかる総学習時間が45時間という単位認定基準内での設定)。各回,Moodle上で教科書等の必読文献,視聴覚資料,あるいは調べるべき事項等を指定し,考えてくる項目やワークシートを提示しますので,必要事項をメモする等の準備をして授業に臨んでください。予習を前提にディスカッション等を進めますので,準備をしていないと授業中の活動への参加が難しくなります。 授業参加は,予習ワークシートの提出と,Moodle上でのディスカッションへの参加をもって評価します。 基礎的な知識の定着を確認するための小テストをMoodleを使用して数回行います。
所要時間: 190分
スケジュール
- 東南アジアのイスラームに対するイメージと文化人類学的地域研究の見方
- 東南アジアにおけるイスラームの状況と「穏健」イメージの問題
- 東南アジアのムスリムの信仰実践と日常生活(1)イスラームの世界観
- 東南アジアのムスリムの信仰実践と日常生活(2)「義務」
- イスラームの知識・学問と東南アジアにおける広まりーウラマーのネットワーク
- 植民地化と日本軍政期を経たムスリム社会の変化ー国境の形成と交流の変化
- 東南アジア各国の独立とイスラームの位置づけー多数派,少数派と国家
- イスラーム復興と政治,市民運動ー1970年代以降のイスラームの位置づけの変化
- イスラーム知識の伝達と教育の変容-キターブ学習から教科書とYoutubeへ
- グローバル市場の中の東南アジアのイスラーム-イスラミック・ファッションとハラール食品
- マレーシアのムスリム大学生とのオンライン交流
- 「正しい」イスラームをめぐる終わりのない問い―過激と穏健,ジェンダーの問題
- 日本という場で東南アジアのイスラームを考えるー交流の歴史と「宗教」観
- 東南アジアのイスラームを通じて学ぶ「宗教」と「文化」の捉え方
教科書
毎回の授業で下の教科書1(久志本・野中2023)の各章を使用しますので,購入してください。教科書2,3については必要個所をmoodleで配布しますが,イスラームの理解,文化人類学的イスラーム研究の必読文献なので関心のある方は是非購入してください。
東南アジアのイスラームを知るための64章
著者: 久志本裕子・野中葉編著
出版社: 明石書店 2023
イスラーム思想を読みとく
著者: 松山洋平
出版社: ちくま新書 2017
イスラーム的 地球化時代の中で
著者: 大塚和夫
出版社: 講談社学術文庫 2000
参考書
東南アジアのイスラーム
著者: 床呂郁哉・西井涼子・福島康博(編著)
出版社: 東京外国語大学出版会 2012
アジアに生きるイスラーム
著者: 笹川平和財団編
出版社: イーストプレス 2018