トルコ語圏研究
総合グローバル学部 - 総合グローバル学科(教授言語:日本語)
BGS57000
コース情報
担当教員: 澤江 史子
単位数: 2
年度: 2024
学期: 春学期
曜限: 月5
形式: 対面授業
レベル: 300
アクティブラーニング: なし
他学部履修: 可
評価方法
リアクションペーパー
授業内期末試験
授業期間中
詳細情報
概要
西洋的であることや近代的であることは,「伝統的問題の克服」という観点で,先進性,見習われるべき目標と考えられがちです。しかし,実際の歴史をみると,西洋化や近代化は非西洋世界において多くの問題を生むことになりました。この授業では,それがどのような問題であるのかを,トルコの具体的事例とともに,関連する理論や概念の面でも理解することを目指します。 より詳しく言えば,トルコ共和国は建国時より世俗的西洋近代世界の仲間入りを国家目標とし,西洋化と世俗化が国是とされました。そのことは,他の中東イスラーム諸国との比較においてトルコに「近代化の優等生」との評価をもたらしましたが,他方で,トルコ政治社会には今日に至るまで未解決の問題を多く生んでもきました。実は,トルコが抱える問題は,実は日本を含む非西洋の多くの国が直面する典型的な問題だとも言えますが,グローバル化の進展によって非西洋世界からの移民が流入し,グローバルサウスが力を増してきた今日においては,グローバルノース(日本はこちらにも含まれます)にも跳ね返る問題であることも明らかになってきています。 したがってこの授業の目的は,トルコの事例を通じて西洋中心主義的なグローバル化の在り様を理解することだとも言えます。各回の授業では,オスマン帝国が西洋帝国主義により解体された論理,トルコ共和国の世俗的トルコ国民という国民像が生む宗教民族マイノリティ問題とイスラモフォビアの問題,アメリカ同盟国でありながら嫌米感情が高い理由,トルコのEU加盟がヨーロッパに突き付けている問題などの予定です。
目標
以下の4点が到達目標です。 1)非西洋ムスリム社会としてのトルコが,「近代化」にまつわるどのような問題に直面したのかを理解する。 2)上記の具体的な政治社会的問題が近代の西洋中心主義の覇権とどのように関連しているのかを構造的に理解する。 3)21世紀の注目アクターとしてのトルコの内政と外交を理解することにより,近代(国際)政治がどのような意味で節目を迎えているのか,新時代の論点がどこにあるのか,を理解する。 4)翻って非西洋社会である日本は,トルコと共通する問題を抱えているのか,抱えていない(ように見える)場合には,なぜそう(見えるのか)についても,トルコを手掛かりに疑問を抱き,自ら調べようとする姿勢を身に着ける。
授業外の学習
この授業には日本語の教科書がありません。そのため,講義中は積極的にノートをとり,分からなかった用語は各授業のレジュメに記載されている参考文献などを参照して自主的に調べてください。また,トルコ国内情勢やトルコを取り巻く国際政治に関するニュースにも日ごろから関心を持って接するといった姿勢が必要となります。
所要時間: 190(予習40分:レジュメ内の用語を調べて授業に臨む。復習150:レジュメ掲載の参考資料や関連するニュースなど通じて授業内容の定着を図る。)
スケジュール
- イントロダクション
- 「非西洋」世界の近代:ウェストファリア史観の問い直し
- 東方問題とオスマン帝国の解体:帝国のタイプと禍根のタイプの違い
- ナショナリズムの近代性と構築性:オスマン帝国の3つのナショナリズム
- セーブル条約とローザンヌ条約:20世紀初頭の国境と国民の線引きの「正義」
- ケマリズム:非西洋国家の近代化の典型
- クルド問題
- トルコの宗教マイノリティ
- イスラム復興の裾野
- 権威主義と民主主義の間のトルコ
- トルコとアメリカ
- トルコとヨーロッパ
- 西洋中心主義的国際秩序への挑戦?
- 学期内試験
教科書
教科書はありません。必要に応じて参考文献を授業中に指示します。
参考書
トルコ近現代史
著者: 新井政美
出版社: みすず書房,2001
The Routledge Handbook of Turkish Politics
著者: A. Ozerderm &M. Whiting eds.
出版社: Routledge, 2019