中東芸術論

概要

正式名称を『千夜一夜物語』という『アラビアン・ナイト』は,アラビア語文学の金字塔のように思われているが,実は中世ペルシア語(パフラヴィ―語)の『千物語』を起源とする。本講座では,『アラビアン・ナイト』と,イランの民族叙事詩である『王書(シャー・ナーメ)』という2つの文学作品を軸として,イラク,シリア,エジプトを中心としたアラブ美術,および中央アジアやムガル時代のインドを含むイラン(ペルシア)の芸術について,建築や工芸史を含め絵画史を中心に概説していく。

目標

最近の研究は,細分化された各国美術史を扱うことが多いが,地域・時代を超えて偏在するイスラーム美術の特質を理解することを第一義とする。 生物描写の禁忌の実態やその影響を,イラン・イラクを中心とした東方イスラーム世界における美術作品を概観しながら考察する。またミクロの芸術である写本挿絵を通して中東の文学に親しみ,視覚芸術と併せて基礎知識を習得することを目標とする。

授業外の学習

受講者は,アラビア語やペルシア語の原典を購読する必要はないが,日本語の翻訳や抄訳を読んで,事前に作品に描かれた内容を把握しておくことが望ましい。参考文献として『アラビアン・ナイト』『王書』『カリーラとディムナ』『マカーマート』は,それぞれを扱う授業回までに,日本語訳にざっと目を通しておくことを期待する。講座終了後は,講義で扱った作品の復習を兼ねて,インターネットにて海外の図書館・美術館のサイトにアクセスし,もう一度じっくりと作品鑑賞することを推奨する。 参考文献・参考ウェブサイトに関しては,各授業時に手元資料に明示する。 版権の関係上,ディズニーの映像,画像を掲載できない。より講義内容の理解を深めるために各自でアニメ版,実写版の「アラジン」を第３回の講義までに視聴すること(ダイジェスト版でも可)。

所要時間: ３時間程度