開発経済学

概要

本講義では貧困や不平等がなぜ存在するのか,また個人や社会にとって本当の豊かさとは何かを経済学的視点に立って考察することを目標とする。週２回４単位の授業である点に注意するように。必須ではないが,事前に「グローバル化と経済学」あるいはミクロ経済学入門・マクロ経済学入門の講義を履修しているとより体系的に学べてよい。 前半ではまず,消費者や生産者の行動を考察し,経済全体の動きと国民所得や平均収入がどのようして決まるのかを学ぶ。また,市場の役割と制度としての限界もここで取り扱う。さらに,指標としての国民所得が何を測り,何を測らないのか考察する。続いて,国民所得や平均収入だけではわからない貧困と不平等をどのように計測するのかを学び,誰がどこでどの様に貧困に虐げられているのかを問う。様々な貧困や格差の指標を学ぶことで先進国及び途上国の実情をよりよく理解することを目標とすると共に貧困・格差を生み出す構造的問題を考察するための基礎を築く。また,一つの側面のみで貧困や豊かさを推し量る危うさも理解する。 後半では,経済学特有の分析手法に触れてもらうと同時に貧困や経済成長を構造的にとらえる訓練をする。ここでは成長モデルと都市‐農村間労働移動モデルといったモデル分析を扱う。その後,時間が許す範囲で人口増加,教育,健康,金融,貧困層の小規模ビジネス,農業など開発経済学の個別のトピックを貧困・発展との関連のなかで扱う。 新聞などを通して国内外の社会問題に常に目を向ける習慣は持っているべきである。この講義で学ぶことがそれら時事問題の理解へとつながる。

目標

・発展の指標として,所得が測れる側面と測れない側面を挙げることができる。 ・所得以外の発展の指標を列挙することができる。 ・発展の定義を理論と実例に基づいて述べることができる。 ・発展の定義を用いながら,貧困・不平等の実例を構造問題に着目して述べることができる。 ・貧困と格差の概念と指標を列挙し実社会の理解に応用することができる。 ・貧困層の教育や医療サービスへの家計支出の不足の理由を述べることができる。 ・非完全競争市場の例や商習慣を述べることができる。またこれら市場のゆがみがどの様に貧困と結びつくか説明することができる。 ・貧困層の小規模ビジネスの特性と構造的問題を述べることができる。

授業外の学習

・講義ノートに基づいて復習する。(40分) ・講義の進行に合わせて,参考書の該当するページを読む。(60分) ・授業で紹介した貧困・発展の指標のデータをインターネット及び図書館資料で確認する。(30分) ・国内および関心地域の新聞をよみ,講義を踏まえて考察する。(30分) ・その他,指定された課題を行う。(30分)

所要時間: 授業 1 回あたり 190 分以上