グローバル社会学

総合グローバル学部 - 総合グローバル学科(教授言語:日本語)

BGS50300

コース情報

担当教員: 八尾 祥平

単位数: 2

年度: 2024

学期: 秋学期

曜限: 金5

形式: 同時双方向型授業(Zoomなど)

レベル: 200

アクティブラーニング: あり

他学部履修:

評価方法

定期試験

定期試験期間中

100%

詳細情報

概要

現在,「グローバル」という言葉を目や耳にしない日はないくらい,私たちの暮らす社会はグローバルなものになっていると言って良いでしょう。この講義では,グローバルな社会現象とそれが引き起こす多様な問題を理解するための土台になるものの見方・考え方の初歩を学びます。グローバルな社会現象を体系的・網羅的に扱うことはあえてせず,レベル300以降の国際関係論・国際協力論での講義を理解するのに役立つ社会学的知見を解説することを重視して講義を行います。講義では,グローバル化は社会を発展させる面もあるものの,「われわれ」とは異なる「他者」とされる人びとをつくりだすという負の側面についても概説します。これと同時に,この「他者」とされた人びとからは世界がどのように見えているのかを理解することに重点をおいて解説します。

目標

①グローバルなレベルで「自己」と「他者」という「違い」を生み出す社会の仕組みを理解すること(大目標),②グローバルな社会現象は,決してごく最近のことではなく,近代という時代の開始と共に始まっているという歴史的な視座を持つこと,③国際関係論と地域研究の研究成果を単に「足し算」するのではなく,それぞれの枠組みでは見落とされてしまった重要な問題を発見するために必要な立体的な視座を身につけること,④「他者」あるいは「異文化」としてまなざされてきた側の人びとの視点からグローバルな権力関係をより公正なものへと変えていくために,学生が各自でこれまでに学んできた近代史を読み替える視座を養うことを目指します。

授業外の学習

1.予習 講義の前に必ずレジュメを読み,わからない用語などがあれば自分自身で調べておいてください。 2.復習 講義では受講生がこれまでに知らなかったような事例,知っていたとしても全く異なる解釈の仕方が多々取り上げられることになるため,簡単には理解ができないことも多々あると思います。このため,講義で配布されるレジュメは最低でも3回は目を通してください。そのうえで,毎回の講義内容のアウトラインを500字から1000字程度で受講生自身がつくることを勧めます。

所要時間: 毎回の講義の予習・復習それぞれに60分程度時間をかけて取り組むことを想定しています。

スケジュール

  1. 導入: 本講義の概要や講義の進め方,そして,成績評価などについて。
  2. 近代社会とは何かⅠ: 前近代とは異なる近代社会のあり方を原理的に考えたカント・ヘーゲルの思想を中心に解説します。
  3. 近代社会とは何かⅡ: 前回取り上げた近代社会のモデルについて批判的に検証したフロイトやマルクスの思想と現代の人文科学・社会科学に大きな影響を与えたソシュールについて解説します。
  4. 近代社会とは何かⅢ: 近代社会のパラドクスと限界を提示したウェーバーと近代社会を乗り越えようとしたニーチェ,これらの先人の示した課題からそれぞれの議論を展開したアーレント・フーコー・ハーバーマスについて解説します。
  5. ポストコロニアリズムⅠ: 国際社会における大国ではなく,旧植民地からこれまでの社会を批判的に捉え直すポストコロニアリズムの潮流について解説します。
  6. ポストコロニアリズムⅡ: ポストコロニアリズムの潮流のひとつに位置づけられる世界システム論について解説します。
  7. ポストコロニアリズムⅢ: ポストコロニアリズムとフーコーの研究が結びつき,これまでの開発学のあり方そのものを批判的にみる脱開発について解説します。
  8. ハワイで始まったパイン産業: 近代的なパイン産業の経営は戦前のハワイで生み出され,世界でトップの生産高を誇るようになった歴史をグローバルな視点も交えて解説します。
  9. 総力戦の時代: 第一次世界大戦をきっかけにして,一国内のヒト・モノ・カネのすべてが戦争を行うための資源として用いられる総力戦体制が出現します。一見すると戦争とはあまり関係がなさそうなパイン産業もこの総力戦のなかに組み込まれていきます。翌週以降取り上げる内容の大きな時代背景として総力戦について解説します。
  10. 缶詰のなかのアメリカニズム: ハワイの近代的なパイン産業の経営システムが日本の植民地であった台湾へと移転した歴史を通じて,アメリカでの大量生産・大量消費型社会の出現と日本帝国への伝播を解説します。
  11. 「周縁」を移動するパイン: 日本の帝国の「周縁」間の移動の事例として,戦前の台湾から沖縄へとパイン産業のノウハウが移転した歴史を解説します。
  12. パインの戦争協力: 一見すると戦争と関係のないパイン缶が実は戦争と深くつながっていた事例を足がかりとして,「総力戦」と呼ばれる近代における戦争の問題を解説します。
  13. パイン産業の「引揚げ」: 日本帝国崩壊後,日本では台湾を失ったあとで沖縄がパインの産地として急激に発展した歴史を解説します。
  14. 台湾パインの「奇跡」: ハワイや沖縄とは異なり,今もなお発展を続ける台湾のパイン産業を事例に,かつての「つくるひと」と「たべるひと」のグローバルな分断を超える近年の状況について解説します。

教科書

テキストは定めず,原則,レジュメに沿って講義を行います。

    参考書

    • In Search of Our Frontier: Japanese America and Settler Colonialism in the Construction of Japan's Borderless Empire

      著者: Eiichiro Azuma

      出版社: University of California Press.2019

    • ナマコの眼

      著者: 鶴見良行

      出版社: ちくま学芸文庫・1993

    • はじめての構造主義

      著者: 橋爪大三郎

      出版社: 1988

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